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琥珀色に染まるとき
第1章 雨に濡れたボディーガード

「それで、どんな状況だった?」
「問題ないわ。女性に怪我はなく、男は駆けつけた警官に連れていかれた」
「……そっか」
「女性からお礼がしたいって言われたけど、断ったわ」
「だろうな」
「なにかあったときのために事務所の名前だけは教えておいたけど」
「うん。まあ、とにかく無事でよかったよ」
「そうね。……でも、少し心配だわ」

 思わず発した声には、いまだ緊張感が漂う。おそらくそれに気づいているであろう城戸の視線が痛い。

「俺が言ったのはお前のことなんだけどね……」

 ぼそりと呟く声が聞こえたが、涼子は表情を変えないよう努め、エレベーターの扉から目をそらさずにいた。城戸が心配してくれていることなど、言われなくてもわかっている。
 少しの沈黙のあと、いつものように、有無をいわさぬ落ち着きはらった声で言い放った。

「私は大丈夫。何度も同じこと言わせないで」

 エレベーターが到着し、扉が開いた。中に入ると、今日は事務所に用がないはずの城戸も続いて乗ってくる。

「帰らないの?」
「……あのさ」
「なによ」
「お前、もう三十だろ」
「だから?」
「こんな仕事辞めて結婚したら? 俺みたいな癒し系のいい男と」
「癒し系なのは顔だけでしょ。年下のくせに人のことお前呼ばわりして、生意気言う男なんて嫌よ」

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