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琥珀色に染まるとき
第7章 慈しめば涙して

 抵抗しようとしていたのは、この傷を見られ、拒否されるのが怖かったからだろうか。彼女はそんな行き場のない想いを心に秘めたまま、男の欲望を受け入れようとしていたのか……。いたたまれない気分になり、かすかに震えるその白い手を握る。

「ごめん。無神経だったかな」
「あ、ごめんなさ……そんなつもりじゃ……」

 涙目になりながらかぶりを振る、涼子の声が弱々しく漂う。
 傷痕に触れようと手を伸ばすも、彼女の手に制されてしまった。

「汚れてるから」

 憂いと哀しみに沈むその表情を見て、この傷が不本意に、本人以外の誰かよって負わされたものだと景仁は確信した。そして、それを負わせた顔も名前も知らない人物に対して、ひどく憤りを覚えた。

「お前は汚れてなんかいないさ」

 低く呟いて立ち上がると、驚いて固まる涼子の身体をベッドに押し倒した。荒くならないよう、極力優しく。そのまま覆いかぶさり、たじろぐ彼女の目を真っ直ぐに見つめた。心の奥底を鷲掴みにするような、その深い瞳を。逃がさないように――。

「綺麗だよ。涼子は、綺麗だ」

 胸に湧きあがった想いのままに、告げた。
 涼子の瞳がみるみるうちに濡れていく。やがて、一筋の涙が目尻から溢れ、こめかみを伝い落ちた。彼女は眉を寄せ、声を押し殺し、静かに泣く。

「もう我慢しなくていい」

 優しく言葉をかけ、固く閉じられたまぶたにそっと口づけると、彼女の震える唇から漏れる吐息が小さな泣き声に変わった。

「うっ、う……」

 この傷を負わされたときも、そんなふうに自分を押し殺して耐えたのか。そう考えただけで、また得体の知れない誰かに怒りがこみ上げた。

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