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琥珀色に染まるとき
第7章 慈しめば涙して

目尻、頬、と涙を舐め取りながら、鼻にも、まぶたにも、額にも、顔のいたるところにキスを落としていく。一つ落とすたびに、涼子、涼子、と心の中で囁いた。最後に唇に優しく口づけると、目の前にある潤んだ瞳を見据える。
こんなふうに、大切に女を愛したいと思うのは何年ぶりだろうか。まるで初めて恋を知った少年のようだと自らの変化を感慨深く思っていると、その瞳が力強くこちらを見返し、静かに微笑んだ。
ありがとう――そう言われたような錯覚を覚え、景仁は言葉を失った。
「……涼子」
名前を呼べば、彼女はまた嬉しそうに頬をほころばせる。その儚い笑顔に、心臓がどくりと鳴り、全身に熱い血が流れた。押しとどめていた熱が再び腹の奥に広がっていくのを感じる。
涼子に微笑みを返し、唇、顎、首筋、鎖骨、順に口づけていく。彼女はそのたびに小さく肩を揺らし、艶やかなため息を漏らす。唇が左胸のふくらみに達すると、あっ、と戸惑いを孕んだ声があがり、その身体がこわばった。
ベッドに腕をついて見下ろすと、物言いたげに見つめられる。
「今日はやめておこうか」
穏やかに尋ねれば、だめ、と空気が抜けるような声が返された。
――言えよ、やめないでって。
実際に発した言葉とは裏腹な心の声に、思わず苦笑しそうになる。
涼子が性行為にあまり積極的でないことは、今までの反応を見れば誰の目にもあきらかだった。それには胸の傷痕が少なからず影響を及ぼしており、そのせいで恋愛をすることさえ忌避してきたのかもしれない。
涼子は正直だが、素直とは少し違う。嘘偽りのない心を持ちながら、ありのままに生きられないジレンマを抱えているように見える。
そんな彼女が自ら続きを求めてきてくれたら、すべてを受け入れ、丁寧にその身体を開かせてやりたい。

