第2回 官能小説コンテスト ノミネート作品
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ノミネートその、透明な鎖を作者 雪緒恋愛・純愛彼女は今日も彼を誘う。その秘密を抱えたまま。彼は溺れる。彼女のすべてに――――
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小林弘利先生
今回のノミネート作品の中で僕がいちばんお気に入りだったのが『海鳴り』とこの作品でした。ラノベ文体で、性愛描写も淡白ながら、体のつながりではなく心のつながりを求めて苦しむ若い恋人たちの姿は好きだったのです。
狂おしい思い、というのはモラルとインモラルのせめぎあいのなかから生まれるけど、この作品はその部分を丁寧に見つめようとしているように思いました。 -
神田つばき先生
ストーリー展開の妙味で読ませる作品がふえた中、普通の性行為の官能描写をていねいに重ねるという点では、この作品がいちばんだった。三人称と一人称の混在も、官能を際立たせるには効果的だった。例えば映像ではこういうふうには描けないし、純文学ではここまで描けないのだから、非常に新鮮味を感じて、一字一句味わって読んだ。若い人どうしの官能シーンと中年のそれには明らかな違いがあるべきで、その意味でこの作品は魅力たっぷりだった。
脚本を書く上で、若い人対象の映像作品がない中、お手本を探している自分にとってはとても参考になった部分が多々あった。映像化してほしいと思った作品第二位。
大きな起伏のない詩のような文章だが、ストーリーの起伏で読ませる作品ばかりでなくていいと思うので、これはこれで成立していると思う。その分、大半を会話文で読ませているのを、さらに詩的なあるいは映像的な地の文を、ところどころに効果的にはさんでいくと、さらに感動が深くなるような気がした。
タイトルも詩的で秀逸。 -
深谷陽先生
個人的には大変好きな作品です。
主人公の男の子と一緒に美少女「凛」と出会い、ときめきながら惹かれていきました。
凛の抱える秘密など重い部分は多いのですが、少年と少女、若く幼い主人公カップルの瑞々しさが救いになっています。
「…で。」「…を。」「…に。」等、言い切らずに終わる文章のクセがわずらわしく感じる人もいると思います。
個人的には、少年の舌足らずなせつない心情の表現として効果的と感じました。 -
大泉りか先生
まずタイトルがいいですよね。受賞作品も含めて、タイトルが「惜しい」と思う作品が多いのですが、この作品のタイトルは他を抜きん出ていると思います。内容については、青春官能小説というのでしょうか。甘酸っぱさと、どうしようもなさに、読んでいて胸がキュンとしました。最後まで言わずに「。」で止めるという独特の文法が、全体的に余韻を与えてはいるものの、ちょっと読みにくく感じました。 -
渋谷さえら先生
個人的に一番大好きな作品でした。
何が良いって主人公の男の子の青臭さが凄く良いんです。思春期の男の子の心理描写が凄く丁寧なんです。どんなにイキがっていても大人の男には勝てない所だとか女の子にどんな過去があっても自分はそれもひっくるめて彼女を受け入れる!という愚直さだとかそういった思春期特有の未発達な心理描写が素敵でした。エロシーンも、自分の愛情を全て彼女に注ぐ所に男の子の幼さを感じて胸がきゅんきゅんしました。 -
山咲美花先生
純愛、まっすぐな愛を描かれていたと思います。シンプルで若干先読みが出来てしまうところが少し残念な感じがしました。共依存、切っても切れぬ繋がりの深さ、そうでなければ成り立たぬ関係など父と子の関係性は、個人的には萌えシーンでした。官能という部分では、やはり物足りなさを感じてしまいました。
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ノミネート秘密作者 RIN不倫・禁断の恋その秘密を隠し通せるのはいつまで…
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小林弘利先生
とりたてて目新しさのないロマンポルノといった感じでしょうか。よろめき妻もの。
不倫ストーリーを真面目に紡いではいますが、心理描写も性愛描写も新味がなく、物語の展開にも意外性がありませんでした。 -
神田つばき先生
「こんな私でも、愛してくれる人がいるんです」 最初の不倫に染まる女の気持ち、言い換えれば不倫のもっとも良いときの気持ちはこれでしょうね。
「初めて見た夫の険しい顔は誰かを守る為のもので、自分に向けられていた微笑みよりもよほど真実味があった。」「もっと奥の部屋なら、もっと一緒に歩けたのに」等、女性心理の描写がきめ細かく、ちょっとした一文で感動させてくれる。男にはこうは書けないし、男目線で書くことに慣れ過ぎた自分もこうは書けない。
不倫する自分、不倫されている自分、義母の不倫を見て傷つく自分をうまく描き分けている。民事でしか法的効力を持たない結婚という制度がどこまで個人の幸福を守れるのか。現代人の幸不幸に関わる重要なテーマだと思うが、そこを素直な視点から描いている点が好感が持て、作者の誠実な姿勢を感じた。トリッキーなプロットなのに「あるかも知れない…」と読めてしまうのは、丁寧に誠実な描写を重ねた結実にちがいない。 -
深谷陽先生
家族内の秘密、ということで東野圭吾作品が想起されてしまい、タイトルは更に一考あってもよかったのではと思います。
内容は、主人公の人妻の気持ちがよく描けていて入り込んで読めました。
他の審査員の方からは「展開が読めた」、という評も出ましたが、自分はエレベーターのシーンでまともに驚いてしまい(笑
そうわかってから前のシーンを思い返して、旅行の事、キスマークの事、夫の「彼女」に対する態度、全てが周到な「フリ」となって主人公と一緒に嫌悪感を感じ、主人公と一緒に気持ち悪くなりました。(嘔吐まではしませんでしたが)
「フリ」が丁寧過ぎると、鋭い人には見透かされてしまうこともある。表現って難しいですね。 -
大泉りか先生
夫とのセックスに不満を持っているヒロインの気持ちが細やかに描かれていて、それゆえ、倉本との不倫の関係についても、嫌悪感なく読めますね。不倫願望を持つ主婦層から、熱い支持を得ることの出来る作品だと思います。どんでん返しに関しても、わたしはとても驚きましたし、また、その「気持ち悪さ」がこの物語の面白さを増すことに成功していると思います。個人的には賞にランクインしてもいい作品だと思っています。 -
渋谷さえら先生
女性心理を描く事に長けた作者さんだと思いました。
特に主人公が旦那の浮気を問いつめて壊れていくシーンはすごかったです。
完璧に主人公に感情移入してしまっていただけに最後のオチはびっくりしました。
読んでてちょっと「ヒェッ」て声が出ました。今回選考まで残った作品の中の、オチにインパクトがあるタイプのものでは一番ではないでしょうか。 -
山咲美花先生
昼ドラを思わせる臭いがぷんぷんとしました。
夫に相手にされぬ妻が女に目覚めていく――。大人になってから知る愛が描かれていて、大人の純愛を感じました。実は義理の母と夫ができていたという、ドロドロとした人間模様は好きですね。
わざわざキスマークを残しておいて、また何事もなかったかのように振る舞うなど、女の心理描写が秀逸。この作品も先読みが出来てしまったことがとても残念でもう少し驚かせてもらいたかったです。またここまで女のドロっとした部分を書いてくれたのなら官能部分ももっとドロドロしてほしかったですね。
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ノミネート隠匿の令嬢作者 結芽里SF・ファンタジー・歴史貴方に出逢うまで生きる素晴らしさを知らなかった──
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小林弘利先生
ストーリーは王道少女マンガのようで面白かったですし、ヒロインも魅力的ではありましたが、官能描写は、同じことの繰り返し、という印象でした。魅力的な登場人物が出てくるのに、その動かし方や出し入れに工夫がなく、その人物たちの内面にもっと切り込む意欲が欲しかったです。 -
神田つばき先生
ハーレクイン系な感じの設定は私のような年齢になるとクリ勃起しにくいが、若い女性、性の経験の少ない女性であれば、日常の自分からかけ離れているほうが興奮を誘われるような気がする。そういう意味でこのジャンルは存在意義も人気もあるはずだ。
設定は現実離れしていても、官能描写はきめ細かく正確でわかりやすく、しかも美しく品もあり、セックスの知識を得たいと思っている若い女性にとっては願ってもない教科書にもなろうと思う。男性は何を見てペニスが大きくなるのか、など私も10代のときにこの小説を読んでおきたかった。時系列的に無理で非常に残念である。ぜひ、今後も若い(特にバージンの)読者のためになる作品を書いてください。 -
深谷陽先生
キャラクターの立て方、主人公の背負っている物等「道具立て」=「風呂敷の広げ方」は魅力的だと思います。
冒頭からの思わせぶりな展開には興味を惹かれましたが、官能シーンは途中から毎回変化がなくそれでいて執拗に繰り返され、折角の魅力的だった道具立ても畳みにかかってからは都合がいい展開で尻すぼみ感は否めません。
妹との和解のキーとなるキャラも「あれ?こんなのいた?」と思ってしまいました。
作者の方はプロットを立てない、とのことですが展開に自由が利く半面付け焼き刃的にならないよう、ポイントの前には「フリ」を仕込んでおく、その事だけでも意識するとよいのでは。 -
大泉りか先生
「これぞ女性向け官能ノベル!」といった作品です。世界観がきっちりと確立していますし、また、こういう作品が好きな女性が「キュン」となる舞台設定もカンペキです。本当はこの作品もなんらかの賞を受賞して欲しかったのですが、男性の支持を集めにくいところが難しかったかもしれません。ただ、この作家さんはこの路線を貫いて欲しいです!タイトルはもっと柔らかで、わかりやすくてもいいかもしれませんね。 -
渋谷さえら先生
この舞台設定とキャラクター設定だと結構なボリュームになりがちですがそれをここまでまとめているのがすごいです。
お家柄の確執だったり、キャラクターそれぞれに起こる問題を、キャラクター自身の過去にしっかりひもづけた上で解決させていってるので読後感がとても良かったです。また、それに関連づけて「どうしてこのキャラクターがこういう性格でこういう生き方をするようになったのか」までキチンと描かれている所がとても判りやすくてよかったです。 -
山咲美花先生
シンデレラ的ストーリーなのかなと思いつつ読み進めていましたが 純愛・トラウマを乗り越えていくところが描かれていました。また、アリエッタには根っからの自虐性が含まれていると個人的に感じました。それゆえ、レオに徐々に肉体的調教されていくシーンは面白かったです。
目(眼)の描写をすごくこだわっていたところもフェチ度が出ていたな、と思いました。
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ノミネート顧みすれば~真の愛~作者 mii恋愛・純愛御曹子でイケメン でも私は貴方に近づけない
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小林弘利先生
安易な、こういうの素敵でしょ? という夢物語だけど、アラブの王子とか、そういう子供っぽさが官能という大人っぽさと相容れないまま終わってしまった印象です。導入の会社員としてのヒロインは魅力的でしたので、そこからトンデモな展開になっていくのなら、その「物語の転調」をもっと大胆に展開させて欲しかったです。 -
神田つばき先生
愛は迷子になりやすい この愛を見失わないように 10年後も30年後もずっと確かめていこう …は名言。この物語のテーマをしっかりと裏打ちしている。
私はてっきり「性奴隷の流離譚」を読まされるのだと思っていたら、そうではなかった。「43章 愛の行方」は愛することが日常生活に埋まってしまって以降の男女のあり方について真剣に考察し、一つの答えも提示している。決して、愛が減じたわけではない。ほんとうは誰よりも愛している。ただ、あまりに近すぎてアプローチの方法を見失って、見つけられなくなってしまう。女性としての充実を迎える30代の女性にとって、これは現代のもっとも重要なテーマだ。
そう考えてみると、前半の性奴部分と後半の愛のテーマの間がすんなり連繋しない感がある。SM描写について、もう少し詳しく調べてほしい点があった。どうしてラビアではなくクリトリスに入れたほうがいいのか、クリトリスにピアッシングすると具体的にどういう刺激があるのか、フィクションでもいいからもう少し理屈が欲しかった。リングの口枷も、その正式名称を書いたほうがいいとは思わないが、どんな材質でどんな形状でどのように拘束されるのか… という描写が重要だ。あるいは逆に、性奴の話はもっと短くサラリと、心理描写中心にまとめてしまったほうが後半のテーマが活きたかも知れない。 -
深谷陽先生
前半のドタバタしたコミカルな部分は面白く思わず吹き出したくなる場面もあり楽しんで読めたのですが、後半、主人公が超絶的運命のヒロインに祭り上げられて行くにつれ、物語のスケールの広がりに反比例して「読みたい熱」は下がっていってしまいました。
作中人物が溺れるほどにはヒロインの魅力がこちらに伝わってきませんでした。 -
大泉りか先生
ユニークなヒロインにぐいぐいと魅かれ、とても楽しく読み始めましたが、途中から思わぬ展開になり、正直、驚きましたし、ちょっと置いてけぼりにされた気分にもなりました(苦笑)。キャラクターの魅力をしっかりと伝えることの出来る筆力の持つ作家さんだと思います。個人的な希望になりますが、そこまで壮大な風呂敷を広げるのではなく、もっと身近な舞台で、ヒロインがイキイキと活躍するラブコメディー的な、女性向け官能作品を読んでみたいと思いました。 -
渋谷さえら先生
前半詰め込み過ぎ、後半冗長過ぎで話のテンポがあまり良くないです。
最初は割とリアル路線なんだと思って読んでいましたが読み進めていくうちに「ん?」「あれ?」と思う部分が多くなり、結果何のどういう話を書きたかったのかが全然判りませんでした。
最初の性奴パートのエロシーンが良かっただけに残念です。 -
山咲美花先生
わたくし的にはこの作品もとても読みやすくてよかったです。アミのような性奴は現実にいますし、実際見たこともあるので、とてもイメージしやすかったです。
なぜアミが性奴になったのかもしっかり描かれているし、愛によりアミ~サエに戻っていくところが良かったですね。ただ、途中から話が飛躍しすぎでは?と思われるシーンもあって、そこがとても残念でした。
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ノミネート『間違い』電話作者 藤見 暁良不倫・禁断の恋それは、間違い電話から始まった…。
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小林弘利先生
ミステリーなのかサスペンスなのか、そういったもののパロディーなのか判然としない、つまりは拙さばかりが目立ちました。
性愛描写も工夫がなく同じことの繰り返しのようです。
何よりキャラクターが薄く、心の闇にも狂気にも踏み込めていない印象でした。 -
神田つばき先生
間違い電話から見知らぬ女性の夫の不倫現場に行くという設定が面白かった。まあ、そこから使えるオカズストーリーになるのかと思いきや・・・ いい方に予想を裏切られた。ミザリー、レイナに匹敵するオリンピッククラスのストーカー女の誕生だ。オカズとしての官能小説ではなく、官能描写のあるミステリーとして愉しめる。
男性に「女のストーカーって怖いのよ」「ハニトラに気をつけて」などと真面目に忠告すると、「大歓迎だよ~」と呑気な返事が返ってくるが、そんな諸氏にこれを読んでもらいたいと思う。結構年齢が高いというのもよかった。リアリティーがあるし、ただの狂気・オビョーキ・変な人では済まされない、女として普通の人生を積み重ねてきた中でこびりついてしまった孤独、傷つき、コンプレックスとそれを打ち消したい思い込み、などの重層が感じられる。
尚子のような女は現実にはもちろん大っ嫌いだし警戒対象だが、こういう女が破滅に向かっていくのを読むのは、実はちょっと底意地悪い快感で読んでしまう。しかし、夫を奪った女を寝取ってほしい、という気持ちはぜんぜん理解できてしまう。自分自身の内側にも「怖い女」が眠っているのかな、と気づかされてしまう。
どうしてこんな秘密めいた女ばかり集まってしまったんだろう、と賢は言うけれど、秘密のない女なんていない、どんな平凡そうな女でも、清廉潔白そうな女でも・・・ と作者は言っているような気がする。尚子だけが悪女なのではない、麻里や宏美が悪い面を曝け出すたびに、なぜか私は楽しくなっていたのだ・・・。 -
深谷陽先生
全編を通じて主人公の相手になる女性に対しての愛情が無く(足りず)、そのせいか濡れ場に入り込んで楽しむ事ができませんでした。最も愛情を持っていた「麻里」とのからみの描写はしごくあっさりとしているし。
どの登場人物にも共感しきれないというのは物語として弱点かと思います。
あとがきに
「一応、謎解きも用意したんですが…そうすると本当にサスペンスになってしまうので、敢えて書くの止めました。」
とありますが、これはこの作品をサスペンス的に楽しんでいた自分にとってはひどい裏切りです。
主人公は何も考えなくてもいいですが、作者様には、その「何も考えない主人公」をどう使えば作品がより面白くなるか、読者がより楽しめるかをとことん考えて、それを文面に反映させて欲しいです。 -
大泉りか先生
サスペンスが下敷きになっているので、読んでいて展開が気になり、ハラハラしながら楽しく読めました。ケータイ小説の文法でなら問題はないと思いますが個人的には「…」の多用がちょっと読みにくかったし、稚拙な印象を与えてしまっているのが勿体ないな、と思いました。それを抜かせば、言葉選びも上手く、官能描写にも長けていますし、シリアスなシーンでは、ゾクゾクとさせられました。 -
渋谷さえら先生
このオチが書きたかったが為にこの話を書きましたーという感じがします。
一つの作品を作りあげるきっかけとして「こういうオチの話を書きたい」というのは良いんですが、
その為に必要となる「キャラクター」や「情景」などのパーツひとつひとつのつくりが雑でした。
そして登場人物と物語がなかなか噛み合わず、読んでいても判らない箇所が多々ありました。
キャラクター自体の作りも雑だったので感情移入も出来ず…なんか勿体なかったです。 -
山咲美花先生
小悪魔的な尚子、間違い電話もきっと偶然ではない意図があるのでは?と読み進めていきました。読みやすさはありましたが、報復に至るまでの人間模様が複雑すぎて図で書いたぐらいです。
逆恨みともいえる女の執念がとてもよく描かれていたのではないでしょうか。それを表すように、尚子の最後の捨て台詞がすべてを物語っています。
全体的に読みやすく面白かったですが、途中で繰り返され過ぎるシーンにやや飽きてしまったところもありました。
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官能小説コンテスト
大人の恋愛小説コンテスト