第2回 官能小説コンテスト 受賞作品
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大賞海鳴り作者 RIN学園・学生・教師長い間心の奥に仕舞い続けてきた過去が、ある日鮮明に蘇る。
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小林弘利先生
このまま普通の小説としてもよく書けていると思います。
強く優しく悲しい、そんな男性キャラ無理なく感情移入が出来ました。
性愛ありき、の作品が多い中、人の心と心の結びつきに焦点が当たっているのも好感触でした。
ヒロインの理性と感情がせめぎ合う感じが狂おしく、そこにこそ「官能」が浮かび上がり、とても良かったです。
ラストなど映像的で美しいと思いました。 -
神田つばき先生
短編だが設定と人物像が確りしていてブレないので引きこまれる。父親の漁師も官能小説には珍しいタイプで、かえってそそられた。AV男優なら佐川銀次の役どころか。陸の孤島という設定もエキゾチシズムがあり、坂東真砂子先生の小説を読んでいるときの気分を思い出した。
「乱暴にしたくない、力を抜いてくれ」などのストレートなセリフがこの男を魅力的にしている。
大人になっても幼いような女性心理の描写が、きめ細かくてうまい。武に相沢の様子を聞き出そうとしたり、音読カードに暗号が書かれていないか探したり。
最終章の幕引きも爽快で読後感がいい。前妻をただの悪役にせず、後悔しながら再起にあがいているところ、大人の読み物として噛みごたえ充分である。 -
深谷陽先生
濡れ場もしっかりありながらそこに頼っていないというか文章も上手くキャラクター一人一人や情景の描写がリアルで魅力的で一般作品として十分面白く読めます。
大漁旗を掲げて船団が帰って来る場面などは、それがどういうものか知らない身でも絵が目に浮かぶようでした。
全ての登場人物の幸せを願いたくなる、優しい物語でもあると思います。 -
大泉りか先生
主人公を始めとするすべての登場人物のキャラがしっかりと立っていて、読んでいてすぐにすっと物語の中に入っていけました。また、一見、悪人に見えるキャラでも、その背景をしっかりと描くことで、読後感の良さを出すことに成功していると思います。ストーリーは若干ベタなところがありつつも、だからこそ、万人に受け入れられる仕上がっているとも言えるでしょう。構成力や筆力も大賞を獲るに相応しいクオリティーですが、ただ少し気になったところは官能の部分が弱いこと。官能シーンがなくても小説として成立してしまうことが、官能をテーマとしたコンテストの大賞としてふさわしいのかを少し悩みました。人間を描くことの出来る作家さんだと思うので、今度はどうしようもないエロスに振り回される人間の生々しい姿を描いた作品が読みたいです。 -
渋谷さえら先生
とてもいいお話でした。直也だったり最後のバスの運転手さんだったり脇キャラに魅力的な人が多かったです。和男が海の男!で武骨なキャラでしたが性描写の部分が丁寧な事もあり、荒々しいんだけどどこか愛情を感じる繊細さがあってよかったです。ラストは切ないんだけど誰も不幸になってないというのがとっても良かったです!読後感が良いって本当に大きいと思います。大賞おめでとうございます。 -
山咲美花先生
かなりの高評価させて頂きました。読んでいてイメージがすーーと入る文章でした。
潮の香りがして、波の音が聞こえ、町の風景も人物も実在している。あたかも目の前で起こっているかのような感じがするほどでした。物語も、深く、切実さが描かれていたと思います。
ただとても残念だったのが『官能』という部分では、やや物足りなかったなーっと思いました。
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特別審査員賞異常性愛作者 マーチン体験告白・ノンフィクション失えば辛い愛、なのになぜ欲しがるのでしょう?愛に命を賭けることができますか?
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小林弘利先生
今回、もっとも性愛描写に力が込められている作品で、主人公が最終的にどんな「愛」を見出すのか。その興味で長大なページ数ながらぐいぐいと読ませる力がありました。けれど、終幕に彼が見出す幸福がとてもありきたりで、そこに最後まで読んできたからこそ得られる感慨、というものが受け取れませんでした。最後まで独占欲と自省の愛(利他とは自分を抑えることではない)から脱却することがなく残念だった、ということです。 -
神田つばき先生
男にしか分からない男の性感や、女には受け入れがたい部分も含めた赤裸々な男の心情の吐露に興味がある。女の赤裸々な告白に比べ、男のそれはずっと少ない。その意味で、非常に面白く読めた。
男か女、どちらかに確り視点を定めて書かれた作品が面白いと思うので、徹頭徹尾男性視点に終始し、女性はすべて哀しみを湛えた存在として描いたことが、この長編告白小説を一気に読めるものにしている。
官能シーンも非常に具体的で、大人の男でなければ書けない描写が続き、読み応えがあった。
ラストの締めくくりも秀逸。唯一挙げるとすれば、タイトルはもう一工夫あってもよかったと思う。 -
深谷陽先生
総ページ数にたじろぎましたが、一番のめり込んで読んでしまいました。
主人公の考えや行動、女性の扱いに対しては違和感を感じる人も多いでしょうし、僕自身も共感出来ない部分が多いのですが、そういった「善し悪し」を越えた「読ませる物語力」が図抜けていて、先へ先へ読みたくさせてくれます。
母親との再会のシーンでは不覚にも目頭が熱くなりました。 -
大泉りか先生
濡れ場シーンに迫力があり、“抜ける”作品に仕上がっていると思います。ストーリーの展開も、スリリングで、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。ただ、男性主人公のキャラクターがエゴイスティックゆえ、個人的にあまり共感出来ませんでした。そういう意味で読者を選ぶかもしれませんが、ダークな雰囲気も含めてハードボイルド官能として立派に成立していると思います。 -
渋谷さえら先生
最初の方の主人公の加虐嗜好が覚醒していく所は官能小説として見るとエロさはダントツで、その部分の描写は大好きです。ごちそうさまでした。ただちょくちょく読み手を置いてけぼりにしているところが多いです。そのせいで全体的に冗長に感じました。読んでて胸糞悪いシーンも多々ありましたが胸糞悪いシーンをしっかり胸糞悪く書けるのは素晴らしいです。晶子のおじさんパートの胸糞加減は絶妙でした。
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山咲美花先生
体験告白ということもあり、また、SМ要素が入っていたので、作者さんはどのような人物なのであろうか、まずそこから入り読ませていただきました。
始めの部分の加虐性という部分に思わず反応してしまいましたが、作者さんははたして?肉体的S・精神的Мなのではないかと思いつつ読み続けました。
官能部分の漢字の多さは、まるで鎧をさらに盾をと思わせるかためな印象の文章でした。
また、内容的には赤裸々でとても面白かったのですが、途中2か所ぐらい飽きてしまった部分がありました。もう少し簡略化させてもよいのでは?
しかし、体験をしつつ自分を見つめなおす、気が付いていく、弱さを認め進んでいくところは素晴らしく、感動させてもらえるところも多々ありました。『官能』という部分で評価させていただきました。
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優秀賞~散花~作者 風花SF・ファンタジー・歴史帝のお妃候補となるべく後宮に連れてこられた少女に待ち受けていたのは,アソコを開発される日々。そして…
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小林弘利先生
これも一般小説でも良さそうな、そして韓流ドラマになりそうな物語で好印象でした。性愛描写はあっさりと処理されていて、ヒロインの心の動きにこそ焦点が合っている物語はとても読みやすかった。
読みやすい、というのはつまりは読者の想定の範囲内で都合よく物語が展開する、ということでもありますが、ヒロインの指導者であるもうひとりのヒロインの扱いが雑だったのが残念。 -
神田つばき先生
遠い国の後宮物語か、とちょっと身構えて読みはじめたが、大奥ものの冒頭のような貧しい女性の出仕の話に思わず引きこまれた。プラス文章がうまい。かなり書ける人だし、いろいろと読みこんでいる人の作品だと思った。
官能シーンもくどく語らずに感じさせ、想像させる筆致でうまい。
後宮で性の奉公人になる、そのための職業訓練を受ける・・・という妄想は、若いころにはよく好んでしたので、個人的に好きな題材。それゆえかえって点が辛くなってしまうところだが、決して陰惨な話ではないのに被虐感を煽る内容で、しっかり興奮を誘われた。
文章力・官能・構成力の三つのバランスが揃っており、一位に推させていただきました。 -
深谷陽先生
全体的に、達者に描けている作品だと思います。
ただ良く出来ているだけに想像を越えないというか、物語の大半が「下層からのし上がるヒロインとその試練」という類型から抜け出せてないように思います。特にヒロインと皇帝の弟のキャラクターの魅力が序盤中盤を通してあまり伝わってきません。
ただヒロインがそれまで敵でもあった全ての妃達を代表して皇帝と対峙するクライマックス、翻弄されるだけだったヒロインの逆襲は爽快でした。 -
大泉りか先生
“女性器”を開発していくエピソードがとても丁寧に綴られており、そこがフェティッシュな魅力を醸し出していて、官能小説としてキラリと光るものを感じました。舞台を『後宮』にしたことで、他作品との差別化に成功しています。文章も上手ですし、背景などの描写もしっかりとされているので、あまり馴染のない『後宮』という世界観に浸る事が出来、楽しく読ませていただきました。 -
渋谷さえら先生
男性キャラのイケメンさが文章から溢れ出ていました。
主人公の純真無垢さに最初はおいおい大丈夫か…と思っていましたがだんだん「頑張れ!」とエールを送ってしまいたくなるくらいキャラクターに感情移入してしまいました。そういうキャラクターを作れるというのは才能だと思います。うらやましいです。キャラ作りのその才能わけてください。 -
山咲美花先生
大奥を思わせる小説でとても好きです。女の嫉妬もよく描かれていたと思います。お妃教育がとてもいいですね。女が成り上がっていく様、覚悟決めのところが好きです。純愛的要素も含まれていてよかったのですが、個人的にはもっと『官能』シーンがドロドロとしてほしかった、という感想です。
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優秀賞愛すバー作者 キミイフェチ・アブノーマル老婆光代が語る男達
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小林弘利先生
愛されることよりも愛すること、というテーマは良いが、それがうまく伝わってきたか、と言うと、惜しい、という印象です。
老人ホームという場の設定とそこに暮らす老女の過去語り、という構成は素晴らしいですが、その老女の物語がそれを聞く若い女性の人生にどんな変化をもたらし、どんな成長を促していくのか、それも同時にしっかりと書き込まれていたなら、と思いました。
老女の語る物語が基本はどんな男に愛されてきたか、というエピソードに終始し、その男達もバラエティーに富んでいるので、愛され方のコラージュのようで、そういう男性遍歴の中で彼女が見つけた人生の真実、というものが読むものの心に響いて欲しかった。 -
神田つばき先生
『完熟の森』は深みのある作品だったが、今作では森にはなかった広がりがあり、飽きずに読ませてくれた。どちらかと言えば官能より愛情を描く人だと思いこんでいたが、縄に対する女性の感想など、リアリティがあり興奮を誘われた。
私も今、老人ホーム入居の準備を考えはじめたところで、光代さんのような老後も悪くないなと思った。今、話題になっているホームでの同衾の問題も出てきた。作者の制作意欲がこんなところにもうかがえる。
映像にしたい作品第三位。 -
深谷陽先生
面白く読めました。
主体となっている、一人の女性の性体験告白もその都度女性の年齢、相手、シチュエーションが変わるので毎回新鮮に感じられました。
単体女優の総集編AV的、と言えるでしょうか? -
大泉りか先生
女性が読んで、ドキドキしながらエッチな気分になれて、最後はすっきりと後味よく読み終えることの出来る、味わいの深いとてもいい作品だと思います。“戦後”という時代に振り回されたひとりの女性の愛と性、悲しい出来事に次々と見舞われても、その都度立ち上がって、逞しく生きる姿に好感が持てました。ひとつ惜しいと思ったのは、その時代の描写がとても少ないこと。もっと戦後の雰囲気を書き込めたらより一層素敵な作品になったと思います。 -
渋谷さえら先生
おばあちゃんが娼婦だったのにビッチ感がなくてキャラに好感が持てました。
男性器を食べ物に例えているところが目新しい表現で良かったです。台詞回しや擬音、男性器を表す食べ物のチョイスなど、センスに微妙な古さを感じましたがそこがまた作品の個性として面白かったです。
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山咲美花先生
とても読みやすく 色で表していた部分が新しいと感じました。
光代の過去の遍歴が描かれていて、このまま終わるのかなっと読んでいると完結部分が偶然ではなく必然であると思え、綺麗な終わり方だなと思いました。ストーリーも良く『官能』という部分も惜しみなく入っていたと思います。わたくし個人的にはとても高評価させて頂きました。
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優秀賞誘淫接続作者 背黄青鸚哥SM・調教・陵辱『きっと私は……あなたが思ってるような女じゃないです……』
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小林弘利先生
何より短いのがいい。
やはり携帯小説は短いものよりも長いもののほうが好まれるようですが、無駄に「終わらせないことが目的」という感じの長大な作品よりも一瞬の閃光のような短いものの方が僕は好きです。読みやすいですし。
そして内容もノミネート作品中、最も狂気に彩られていてスリリングでした。とくに新宿駅での狂気炸裂は映像で観たいシーンの一つです。ここで物語が終わっていた方が、もっと読者のハートに突き刺さる作品になったことでしょう。
ラスボスは最後まで謎のままだった方が、見えない電波に人々が洗脳され操られている現代社会の風刺となったのに、とそう思いました。 -
神田つばき先生
官能描写が具体的。モバイル小説は若い女性にとって絶好のオカズであり、その意味でこの作品のおもしろさを認めない。ましてそれが男の言葉と感覚ではなく、女性だけが知る細かな感覚を描写してくれていれば、最高のオカズになる。男性が描くと、羞恥露出するたびにすぐ見つかって、そのたびにヤラレてしまうので、かえって興奮が冷めてしまう。見つかりそうで見つからない、気づかれているのかも知れないが事なきを得る、その繰り返しがよかった。
ご主人様と連絡が取れなくなったときの苛立ちなど、心理的にもさすがの描写だった。このあたり、男性目線の官能小説にはないので、思いきり引きこまれてしまった。
一般的に女性は女性に責められることに抵抗がある。ふんわりしたレズならともかく、SとMとして君臨されることは、多くの女性は母親に対してトラウマがあるためハードルが高い。女に凌辱される絶望感をうまく描いて興味深い。
ストーリーの起伏、伏線などが素晴らしく、短編ながら小説としての充実がある。今回のノミネート作品から好きな作品を選んで映像化していいと言われたら、私は迷わずこの作品を選ぶ。言葉だけではない絵的な面白さもぎっしり詰まっている傑作だと思う。翠はさしずめ真木よう子だな、一昔前なら黒沢あすかだな、などと考えて楽しませてもらった。 -
深谷陽先生
序盤の「姿の見えないご主人様」とのプレイの描写は、SM専門的に見てどうかはともかく、臨場感や主人公の反応に生々しさがあって入り込めました。
翠の正体もやや類型的ではあれ、生き生きと描けていたと思います。
しかしながら新宿駅改札あたりをピークにしりすぼみになった感があります。
真のご主人様の正体は、明かされた所で出オチというか意外な人物でした、という以上の広がりが無く、その後のプレイは蛇足にしか見えません。
いよいよ正体を現したご主人様が回線越しでは出来なかった、それはそれは物凄いプレイをするか、あるいは正体は明かされた筈なのに実はそれはフェイクで、真のご主人様から新たな接続があり、その正体は見えないまま…というラストならまだ余韻あって読後感が良かったかもしれません。 -
大泉りか先生
ヒロインが耐えることの出来る、“ギリギリのライン”に甘んじず、きちんと、その少し上を行くところが「わかってる!」と思いました。“SM”をテーマとしているので、プレイのバラエティーが豊かなところも、官能小説として好評価です。濡れ場の描写も巧みで、ヒロインの心情描写と合わせてしっかりと描かれていて、とても上手な作家さんだと思います。個人的には大賞ですね。ちょっと惜しいのが“ご主人様”の人間的魅力のなさというか、個性のなさ。ヒロインや翠はこれほど魅力的なのに……また、SMによる人間関係の確変を描くのならば、ラストをもうひと捻りをすると、より素晴らしい作品になったと思います。 -
渋谷さえら先生
選考作品の中では一番性描写に気合いが入っているのではと思いました。
貞操帯だとかレザーだとかの露骨な所に官能小説っぽさを感じました。
オチのためにわざとかもしれませんがいかんせんラスボスが空気すぎるのでは。
どっちかというと中ボスの方がインパクトがあったので、いっそそこで終わらせておいた方が…という気がしないでもないです。 -
山咲美花先生
SМをテーマということで期待感が大きかったせいなのか、少しがっかりしてしまいました。SМの住人として少し厳しめに見ていたのかもしれませんが。登場人物の行動描写はとても細かく書かれているものの、精神的部分また愛という部分に関しては、描写が少なかったのかなと思います。麻琴の『ご主人様』が実は麻琴が見下していた翠だったというところは萌えポイントでした。次回の作品を期待しています。
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官能小説コンテスト
大人の恋愛小説コンテスト