第4回 官能小説コンテスト 受賞作品
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大賞歪んだ鏡が割れる時作者 RIN不倫・禁断の恋秘密の関係
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小林弘利先生
プロットにひねりがあり、小説としての面白さをこそ描こうとしているところが良かったです。官能シーンも物語の中心に置かれているので、官能小説たり得ているようにも思います。ハッピーエンドにならずにすべてが崩壊していく話でも良かったのではないか、とも思いましたが、なんとなくハッピーエンドにしてしまう、というのも「いまの時代」らしいのかも知れません。 -
神田つばき先生
関係ない二組の男女の話―と見せかけて、一つの渦に飲みこまれていく展開―ありがちな設定かも知れないが、ユウのキャラクターがよかったので楽しめました。
あえて難を探すとしたら、エンディングの雅人との復縁が単純すぎて、ふわーっと終わってしまうことです。一度は離れた夫の「肌」に感じる生理的な違和感、それを乗り越えてしまうような性的な事件が一つあるとよかったです。「赤ちゃん欲しくない?」というメンタリティにあっさり到達してしまうため、パーティーのシーンまでの緊張感の積み重ねが消えてしまいもったいないです。 -
大泉りか先生
まったくタイプの違う、人妻と女子高生、というダブルヒロインを設定しているのが、官能小説として一粒で二度美味しく楽しめました。サスペンス仕立てのストーリーがスリリングで、濡れ場もこってり濃厚。しかも場面場面の、必然性もきちんとある。それぞれの登場人物たちが生き生きと、各々のキャラクターに従って自然な行動をとっていて、読んでいて違和感がなく、最初から最後まで物語に耽溺できました。文句のつけどころがありません。
官能小説家の仲間に「書いている時に興奮しているか(勃起するか/濡れるか)」を尋ねると、ほとんどの方が、「興奮している(勃起してしまう/濡れてしまう)」と答えます。わたし自身も濡れ場を描く時にはムラムラしますし、本当はすぐにでも解消してすっきりしたい気持ちに、なんとか抗いながら、必死に登場人物をエクスタシーに導くまで書き続けるのが常です。ストーリーが面白いことは、もちろん小説として大切ですが、官能小説は読者をムラムラと興奮させてこそ。そのためには自分も書いているうちに「興奮しすぎて、書き続けるのがつらい」と思うような濡れ場を、ぜひ描いていただきたいですし、そんな作品を読んでみたいと思っています。 -
深谷陽先生
最も心置きなく官能シーンを楽しめ、またストーリーも面白かった、と感じた作品です。
ストーリーへの期待や個々のキャラクターへの印象の変化など、作者の狙いが最も成功して読者に伝わっている作品でもあると思います。 -
片桐由摩先生
今回のノミネート作の中で、総てのバランスが良かった作品だと感じました。長過ぎず短過ぎず、伏線もしっかり回収され、物語の構成も読者の目を意識しているなという印象でした。なので殆ど非の打ち所がない……のですが、あくまでも個人的な希望としてもう少し官能描写が濃いめのものを読んでみたいなと思いました。ノミネート作全体にも言えることですが、最後の方はどうしても風呂敷を畳む方に意識がいきがちで、官能が薄くなってしまうのが読んでいて非常に惜しいのです。次の作品にも期待しております。
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特別審査員賞星と僕たちのあいだに作者 マーチン恋愛・純愛星空に手を伸ばしたとき、柔らかな暗がりが二人を包んだ
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小林弘利先生
今回のノミネート作の中で人物が最後まで地に足が付いた感情の揺れや起伏を持ち続けていたのがこの作品です。官能描写は少ないけれど、ところどころにオリジナルな表現があり、作者の人生観、恋愛観、世界観をしっかり表現した内容も好感が持てました。 -
神田つばき先生
男女二組を描くというのはなかなか難しいところがあるが、女性二人の対比が明確だったため安心して楽しめました。仕事は充実しているけれども不倫の恋に苦しむ早苗と、子供が産めない麻衣の悩みは非常に今日的で、日本の女性が直面している問題をうまく投影しています。
そういった骨組みがしっかりある上で、初めて大人の官能小説を楽しむことができるのです。官能シーンはたっぷりありながら、性行為あるいは快楽の周辺にある哀しみを描いて見事でした。 -
大泉りか先生
最初に思ったことは「映像化したら面白そう、映像でも見てみたい」ということです。各登場人物たちの人となりやバックボーンまでもがしっかりと深く描かれていて、良質の群像劇だと思います。ただ、この作品も濡れ場がやはり物足りない感が否めませんでした。物語がとても面白いので、そこだけがとても残念です。 -
深谷陽先生
丁寧な心理描写で候補作中もっとも小説らしく、文章も達者ですがややくどくも感じてしまいました。官能描写とストーリーのスウィングもあまり感じられず主人公と麻衣の最初の官能シーン以外は、いっそ義務感で挿入されているような。
多くの登場人物が誠実で、抱えている問題も関係も切実でそれらがこの物語を官能的に楽しむことを阻害してしまったかもしれません。 -
片桐由摩先生
とても読み応えのある作品で、今回のノミネート作の中では一番硬質な印象を受けました。登場するヒロイン達のそれぞれの葛藤がきめ細かに描写され、女性読者の共感を得やすい作品だと感じました。私は今回初めて読ませていただきましたが、筆力のある書き手さんだと思います。ただ「官能が物語の軸にあるか」というコンテストの主旨での評価になると、非常に惜しいというのが正直な感想です。「官能」と「恋愛」は切り離せないものですが、どちらに重点を置くかでドラマの描き方が変わります。どちらを選んでも間違いではなく、それぞれに魅力はありますが、せっかくの官能小説コンテストですから、私としてはもっと登場人物達の剥き出しの欲望や快楽の果てを読んでみたかったです。次回は是非、マーチンさんが考える「官能」をこの筆で描き出して欲しいと思います。
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特別審査員賞クラス×イト作者 成巳京学園・学生・教師何処にでもある教室の中では、様々な人間模様が展開する。淡くも時として残酷な、性に纏わる物語。
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小林弘利先生
今回はラノベ感覚の作品が多く、これはその中でも一般小説に近い感覚でした。官能シーンがやはりありきたりで工夫がなく、ただノルマをこなしている、という印象でした。 -
神田つばき先生
冷たい火花が散るような口止めのフェラチオシーンがサスペンスフルで、HRまでの展開に緊迫感がありました。語り人を変えての章立ても人狼ゲームを見ているようで非常に面白かったです。
しかし、HRから後は冗長に感じられました。礼華の過去、藍山楓の過去ともにボリュームを削ってスピード感を出してもよかったのではないでしょうか。
その分、全体的に官能シーンが少ないので、そこに行数を割いてほしかったという思いもあります。 -
大泉りか先生
大長編ながらも物語の展開が読めず、先が気になって最後まで一気に読みました。サブタイトルなどが凝っているのが面白いですし、章の最初に主要人物が書かれているのも親切です。濡れ場の数がちょっと少ないのと、そもそも読者の手をペニスや股間に導くような、実用的な濡れ場がないのが残念でした。18禁の官能小説ではなく、過激なライトノベルという位置づけのほうがしっくりくるかもしれません。あと誤字が多いとせっかくのリズムが崩れてしまうので、勿体ないですね。 -
深谷陽先生
次々と語り手が変わり個々の人物像が立体的に見えてくる構造が面白く、ジュブナイルのように一人一人の痛みや喜びが瑞々しく伝わって来て内容の重さのわりに爽やかな読後感でした。
官能という意味ではもっと描けたのでは、と思います。
誤字の多さは気になりました。 -
片桐由摩先生
今回恐らく一番賛否が分かれたであろう作品で、十位という評価もある中、私は一位をつけました。「官能小説であるか」というところでは大きく評価を下げるのは間違いないのですが「クラスメイト」のそれぞれの感情の揺らぎや欲望、危うさ、そんな思春期でしか描けない未成熟な官能性と、物語の構成がぴったりはまっていたと思います。個人的には今回一番心惹かれた作品です。ただ惜しいのは誤字がとても多いこと。大事な場面の漢字が間違っていると、それだけで物語の雰囲気が壊れてしまいますので、そこは今後注意して欲しいと思います。
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優秀賞小田桐菜津子と七つの情事作者 フカイ主婦・人妻・熟女平凡な会社員の既婚女性、小田桐奈津子の経験する、七回の性の秘め事。
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小林弘利先生
イメージの断章のような独特のスタイルが個性的でしたが、湊かなえ作品の亜流のようでもあり、挿話がどれもありきたりな印象で、そこにこそ独創性が欲しかったと思いました。 -
神田つばき先生
ゼロ年代の出会い系独特の世界が楽しめました。
世にある官能描写は、男性が自慰のおかずにするために女性ばかりを描いているものや、女性向けのものというと男性のイケメンぶりの描写ばかりが続くものが多い中、男性の反応も描写しているため、官能シーンがおもしろく読めます。
中盤、擬音と擬音の掛け合いになってしまっているところは避けたほうがいいと思います。エンディングに向かって言葉選びが周到になり、筆がなめらかになっていきます。たとえば、「互いの性器がはじけそうだ。」という表現などは一見シンプルですが、擬音のぶつけ合いにはない臨場感があります。 -
大泉りか先生
ひとつのエピソードに必ずひとつは濡れ場があるので、安心して読めること、それぞれのプレイにバラエティがあるところに好感を持ちました。ただし寸止めの連続は、男性読者にとっては少々使い勝手が悪いかもしれません。ヒロインと、各章の語り手となる男性キャラクターとの出会い方にリアリティがあり「もしかして、こういうことがあるのかも……」というトキメキを感じられました。官能小説はいわば「男女が会ってセックスをする」という話です。その始まり、出会いのシーンにどれだけリアリティを持たせられるかによって、読者がどれだけ感情移入出来るかが左右されます。その点において、このヒロインが遭遇する7つの出会いは、突飛すぎず、ほどほどに「ありそう」と思えてぐっと引き込まれました。 -
深谷陽先生
章ごとに語り手が変わる構成が効果的で、読み飽きず、またヒロインの魅力を高めていきます。
自分が各章の語り手に感情移入して、一人の魅力的な女性と様々な形で出会う疑似体験のような感覚を味わえました。好作だと思います。 -
片桐由摩先生
章ごとに語り手が変わる構成で、とても面白く読めました。ネットを媒介に初対面の男性と出会い、快感を得る───リアルではなかなか出来ないことですから「こんなことがあったら」という妄想をくすぐる素敵な設定だったと思います。ただ後半、やや急ぎ過ぎた感を受けました。主人公の躯が徐々に開かれていくわけですから、それをもっと読み手に感じさせる濃密な描写、またヒロインの戸惑いや罪悪感、嬉しさのような感情が垣間見えると、官能小説としての満足度が上がったのではないでしょうか。
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優秀賞危険な香りに誘われて作者 momiji恋愛・純愛隙見せんなよ。遠慮なく食っちまうぞ。
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小林弘利先生
危険な男に引かれていく一般女性、というお話はヤクザ小説と純愛小説の合体が狙いだろうけど、上手く機能していません。それは男が命がけで惚れる女、その女を描いていないから。何故男が一目惚れしたのか、なぜ彼女に惹かれたのか。彼女のどこが他の女性と違うのか。それが伝わってこないままでした。 -
神田つばき先生
官能描写についてだけ言えば、ノミネート作品中もっとも良かったと思いました。女性読者にとっては男性主人公がいかにセクシーであるかというのは重要なことで、その点はこの作品の賢也がピカイチでした。
惜しむらくは極道者たちの描写が甘く、漫画的だったことです。反社会的ではありますが、日常と非日常の境界線に生きる彼らに性的な興奮を覚える女性は少なくないでしょう。アウトローな彼らをもう少し魅力的に描いてくれていたら、と残念に思います。 -
大泉りか先生
文章が上手く、描写や話運びもスムーズなので、すいすいと読み進めることが出来ました、前半、「悪い男」である男性主人公が本当にクズで、DV要素も高く、くりひろげられるセックスが共依存的でもあり、個人的にちょっとだけ苦手だと思っていたのですが、読み進めていくうちに、好感に代わっていき、ヒロインにアナルに指を差し込まれるあたりで一転して好ましい作品となりました。もしかして最初のほうで、男性主人公が荒れている理由やちょっとした可愛げなどが描かれていると、もっと早く没頭できたかもしれません。 -
深谷陽先生
長いです。また主人公とヒロインの魅力に説得力を欠いているような。
序盤、ヒロインは主人公にたいして「チャラいオレ様キャラ」といった印象を抱き、それが恋情へと変わって行きますがそれに自分はついて行けず置いて行かれました。主人公からヒロインへの「お前じゃなきゃダメだ」感にもあまり共感させてもらえませんでした。
ストーリーにはそれなりに起伏もあり先を期待させる展開もあったのですが、結局はそこまでの波乱や衝撃もなく都合よく解決していってしまった印象です。
官能シーンは多いのですが多いだけに単調さが目立ったように思います。 -
片桐由摩先生
大ボリュームの作品で、私が個人的に好きなヤクザものということもあり、楽しく読ませていただきました。ただ長所が短所にもなり得るタイプの作品で、点数をつける際に非常に悩みました。賢也さんの活躍が生き生きと描写され、そこはとても魅力的なのですが、その分、真紀さんとの官能描写が弱くなってしまった印象です。エッチシーンは確かに多いのですが、家の中が続いてしまうのが少しもったいない気がしませんか?せっかくのヤクザものですし、事件を絡めた、この世界観でしか読めないような大胆なシチュの官能表現を盛り込んでみて欲しかったです。
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官能小説コンテスト
大人の恋愛小説コンテスト