第3回 官能小説コンテスト 受賞作品
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大賞
該当者なし
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特別審査員賞曖昧なままに作者 成巳京その他バツイチ三十男はある時、純真で可愛らしい女性と出会う。しかし彼女には、意外な素顔と凄惨な過去が……。
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小林弘利先生
ストーリーが前に進まない苛立ちと主人公が経験する事柄にリアリティを感じない、擬音の使い方が官能を削いでいるように感じました。
そういう難点はあるものの、二人の女性の心模様はとてもうまく表現されていると思います。 -
神田つばき先生
一般に男性は性愛の行為についてはよく語るけれども、その思いについてはくわしく語らない人が多いように思う。つまり、何を見て、何を思って勃起するのか、射精するのか、という男の「興奮の仕組み」は、女性にとってはなかなか興味深い謎なのだ。男性の心理、女性の心理ともにバランスよく書けている点に読みごたえがあった。
愛美の独白になる第13章は、この章だけ人称が変わるのでどうかと危惧したが、内容がよかった。柴崎はありがちな存在なのだが、愛美の心理をきちんと描いているので、読ませる章となっていた。個人的に好きな物語であり、漢字や人称の間違いがなければ、二位以上に推薦したかった。 -
大泉りか先生
しっかりと濡れ場のシーンが描かれていて、良かったです。同じ相手とのくりかえしの濡れ場を描く場合、どう差別化を付けて行くかを考えることになると思います。少しずつプレイがエスカレートしていくことが通常ですが、この作品の場合“フェラチオ”という縛りがあるので、なかなか難しい。だからこそ、水着や制服などのコスチュームを入れてくるあたりの著者の方のサービス精神が、個人的に大好きで、一位に推させていただきました。また、闇を抱えたヒロインと対照的な奈央のキャラもとても好感が持てて、読みながらついつい「上手くいきますように!」と応援してしまいました。 -
山咲美花先生
ストーリーが個人的にとても好みでした。
読みやすくイメージしやすいという点が良かったですし、官能部分も多いのに、それでいてしつこくなかったのも高評価です。屈折した愛が良く表現できていたところもポイントが高いです。
終わり方について賛否両論ではありましたが、わたくしは印象的で良かったと思います。 -
松村由貴先生
キャラ造形はしっかりしているが、その形成理由が実は陳腐。口淫描写、制服情交描写のあたりは劣情を煽ってくれるし、口淫を貫くヒロインの心理的理由づけには苦労が偲ばれる。が、プロローグ、エピローグは必用か。偶然ならいらないし、必然なら怖さ=「エロ怖」を意識して全体を見直さないとならなかった。タイトルにダブルミーニングを込めたかもしれないが、官能小説としてかなりいい出来にあるので、そこが惜しかった。 -
内藤みか先生
出会い系で知り合った少し病んでいる女性にハマってしまうという男性は、実は結構いるみたいです。なのでこの作品の設定を、とてもリアルに感じました。さびれたホテルでする退廃的な感じのエッチもとてもいい。ただ、もったいなかったのは、リアルさを生かしきれていないところ。出会い系サイトでの出会いのシーンなどを臨場感たっぷりに書いてみたら、一気に世界観が出来上がったかもしれません。ラストシーンも官能小説賞の応募作だということを意識するともう少し違ったものとなったかもしれません。
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特別審査員賞先生、早く縛って作者 ももはSM・調教・陵辱調教の先にあるものは……
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小林弘利先生
物語性、キャラ、官能描写、それぞれ高得点ではないかと思います。特に
私の心を、身体を、時間を、すべて縛って
という文章はとても素敵でした。
今回、最後まで登場人物たちの行く末を案じながら興味深く読めたのはこの作品だけでした。 -
神田つばき先生
妻や彼女ではない、でも対等にセックスを楽しむセフレとも違う―「愛奴」という立場に身を置く女性は、決して表に出てこないだけで、意外に多いのではないかと思っている。この作品は、「愛奴だから感じることのできた幸せ、というものがあるのではないか」という、今日的なテーマに貫かれていると感じたのは、私の深読みだろうか?
SMにおいて「深くなる」ということは、行為が激しくなることではなく、心が縛られて互いの存在を分かちがたくなることだ、と信じているので、この作品には惹きこまれるものがあった。エンディングがややすんなり結んだ感はあった。今後もこのテーマで物語を書いていただきたいと願う。 -
大泉りか先生
軽い携帯小説調でありながら、確かな筆力で描かれているため、女生徒のエモさと、官能の痴情の両方が、しっかりと味わえる作品でした。「Mっぽく責められたい」という女性が多いことを考えると、確実にニーズのある作品です。携帯小説らしく、閉じた世界で終わるのかと思いきや、舞台が変わるところも巧み。目を引くタイトルも素晴らしいと思います。 -
山咲美花先生
学園という限られた環境なこともあってか、調教シーンには物足りなさを感じてしまいます。SMというよりは“ごっこ”を取り入れただけの恋愛物語のように見えました。もしかしたら、わたくしの目線がマニアックすぎるのかもしれませんが……。
ストーリー的には、徐々に調教され恥ずかしがりながらも責められるのを期待してる結衣が、とてもかわいらしく表現されていたと思います。そこは萌え要素でした。その反面、先生のキャラが話を追うにしたがって徐々に弱くなっていくように感じられたのは、少し残念に思いました。 -
松村由貴先生
今・宇能鴻一郎的、告白モノへの挑戦は素晴らしい。ただ、濡れ場が濡れ場として機能しているだろうか。いきなりの股開きをどう評価したものか。徐々に開脚されていく羞恥などが決め技になればどうだっただろう。現代の女の子といえばいえるのだが…。後半の男の回想部の出来はいいので、もったいない。なぜ、この構成をとったのか、そこも残念。 -
内藤みか先生
私はこの作品に一番高い点をつけました。官能描写が群を抜いて多かったので、これぞ官能小説の受賞作にふさわしい、そう思ったからです。タイトルもリアルにいやらしくて、とてもいいです。ヒロインもいい意味でかなりエッチで、子犬のように先生を慕う姿は、女性読者のみならず、男性読者もきゅんとくると思うのです。惜しくも大賞になれなかった理由は、個性でしょうか。作者のオリジナリティーをもっと出してもいいのでは。あと、先生が優しすぎました。もう少し話を盛り上げるためにも、先生は、最初のうちはもっと冷たくてもよかったかもしれませんね。
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優秀賞陽炎ーカゲロウー作者 まみSF・ファンタジー・歴史盗賊の頭 市九郎とその情婦 赤猫の物語
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小林弘利先生
物語として大事な部分。心情や出来事のディテールを描いて欲しい部分がことごとく伝聞で綴られるので物足りなさが募る。だからこそ短くまとまっている、ということでもあるのだけど、全体にあらすじを読まされている感じでひとつの作品を読んだ、という印象は残らなかった。登場人物は魅力的な個性派ぞろいなので、もう少し丁寧に一人一人の心の動きに寄り添ってもらいたかった。官能描写は淡白で、これを官能小説と言えるのかどうか疑問。 -
神田つばき先生
池上遼一の初期作品『おえん』に見るような、江戸時代のアウトローの世界の官能を楽しませてもらった。生娘の激しい羞恥など、描写が深くていねいで、総評の冒頭に書いた「行為の前の時間」「行為に続く時間」の、ひそやかな官能が豊かに描けている。
もう一つのテーマとして、『傷の官能』がこの作品の大きな魅力であった。サチの顔の傷はもちろん、最後にサチと共に歩む八尋も性別に傷を持つ者と言える。市九郎とサチの官能シーンに、サチのスカーフェイスの魅力を愛でる描写があれば、迷わず大賞に推したかった。作者の今後に大きな期待を寄せている。 -
大泉りか先生
今回の応募作品の中では少し異色ですね。ただ、こうした挑戦はとても素晴らしいと思います。こういった、ユニークな作品が読めるのも、携帯官能小説のコンテストならではだと思います。ただ、ちょっともったいないのは、各キャラの個性は非常に際立っているのに、実際に起きる事件が少ないということでしょうか。各キャラ1話ずつ、濡れ場含めて活躍するエピソードがあるとより面白く読めたかと思います。 -
山咲美花先生
とても短い文章だけれども想像力を掻き立てられる作品だったと思います。
市九郎の人物像が印象的だし、他の登場人物においても一人一人にしっかりとしたキャラがあったせいか、作品のインパクトも抜群でした。ただし官能という部分に関して、さっぱりしすぎているという印象です。
けれども続きが読みたくなる、後を引く作品であったと思い高評価です。 -
松村由貴先生
歌舞伎、講談仕立てによくできた掌編。ただし、いまのままだとこれは「愛の物語」だ。劣情を伴う官能小説には足りないが、エンターテイメントとしては心憎い物語。この短さの中で、それぞれのキャラがしっかり頭に残る。長編官能小説として、書き直しを期待したいところ。 -
内藤みか先生
同じタイトルのよく売れた一般小説があるので、このタイトルは勇気があるなとまず思い、中身にとても文章力があり、驚きました。江戸時代の小説は私も「男おいらん」という小説を書いたことがあるので、それっぽい文体を書くのはそれなりの勉強が必要だと知っています。そして醜い女性が抱かれる設定は「私なんて……」とコンプレックスを抱きがちな現代のおとなしい女性達の心の慰めになると思います。ただ、官能量が少なめだったのが、実に惜しいです。
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優秀賞痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~作者 ききまろ学園・学生・教師天才サッカー少年は、実は痴漢。弱小サッカー部のお話
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小林弘利先生
官能小説ではないですね。これはスポーツ青春小説です。そして、そういう作品だと思えばよく書けていると思います。
女性をモノ扱いしない作品で、それは好感触。けれど、これは官能小説ではないと思います。 -
神田つばき先生
官能描写があまりにも少なかったため、個人的には辛い採点をする結果となってしまったが、いちばん注目を集めた作品でもあった。「痴漢脳」という言葉だけでも読ませるし、期待を裏切らない着想の新しさに、文章力の確かさも加わった意欲作であった。
AVのドラマライターの身としては、R18映像では倫理的に制作できないもの―特に未成年者の性を描くこと―を文芸作品で読みたいという願いがある。 SFやホラーなど新しい設定の官能小説も読みたい。「痴漢脳小説」シリーズの継続に期待する。官能シーンを増やして、ぜひ挑戦していただきたい。 -
大泉りか先生
わたしの中の「中学生男子脳」と「ホモソーシャル好き」が「イイっ!」と激しく刺激された作品です。実はサッカーはルールもろくに知らないほどなのですが、それでも面白く読めましたし、こんなに読後感の爽やかな官能小説を読んだのは初めてかもしれません(笑)。ライトノベルと官能小説を合わせたレーベルは存在しますが、それともまた違った個性を持つ作品だと思います。この路線をぜひ、どんどん極めていって欲しいです -
山咲美花先生
この作品は賛否両論でした。わたくしも“痴漢脳”というフレーズに期待感を持ったので、痴漢脳ってなになに? 犯しまくるのかしらっ!? と、大興奮で読み始めたものの、持っていた期待とは違っていたため、少し残念に感じてしまいました。
弱小チームが強いチームになっていくであろう…と先読みが出来てしまったところや、サッカーをよく知らない人にはルール説明などが多くややとっつきにくく、そのへんが残念に感じました。
官能部分はソフトタッチで、脳から汁が出るまでに至らなかったです。でも、これは官能の新しいスタイルではないかと感じました。次回を期待したい作品でもあります。 -
松村由貴先生
僕が最高得点をつけたふたつのうちのひとつ。ただ、0か100か評価は真っ二つに分かれる作品。まずは、エンターテイメント小説として王道中の王道。構成も上手い。ヒロインふたり、真面目な女の子と不良少女の設定は甘酸っぱい時代を思い返させるのに十分な設定で読んでいて、楽しい。しかも両方処女だ。劣情は自ずと昂まる。ただし、情交描写のしつこさ、回数が単純に少なく、そのバリエーション不足も惜しい。真面目な子がこんなこと、不良少女なのにこんな羞恥、あるいはならではの大胆さが、もっと書き込まれれば、爽やかで、笑いと涙というエッセンスを持った新しい官能小説が誕生していた。 -
内藤みか先生
男性目線での官能小説です。なので可愛い女の子達と主人公の男の子とのエッチな青春エピソードが散りばめられています。でもその割には友人の男子生徒たちのこともかなり書き込んでいます。なので私はちょっと誤解をしてしまい、この友人の男の子たちもエッチシーンに絡んでくるのかしらと期待してしまったので残念でした。友情を描くだけならば男友達はもっと抑えめにしたほうが、読者の目線はブレなくていいんじゃないでしょうか。
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優秀賞§ 龍王の巫女姫 §作者 弓月 舞SF・ファンタジー・歴史村の巫女姫に降りかかる突然の悲劇と凌辱。清らかなその身は若き王の手に溺れる。
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小林弘利先生
物語は面白く、キャラもよく描き分けられていて、読み応えがありましたが、性愛が物語の中心には置かれておらず、味付けとして扱われているので官能小説と呼べるのかどうか疑問です。ただ。性愛シーンも陵辱だけにとどまらず、愛の表現として昇華されていく様子がぼくには嬉しかったです。 -
神田つばき先生
長編でありながら、世界観も文体も最後まで崩れるところがなく、美しさが群を抜いていた。見事というほかない。言葉の一つ一つを、宝石を嵌め込むように吟味して磨いていることが伝わってくる。
異国で過去年代、というと読む側は一瞬身構えるものだが、気がつけば精細で美しい描写に楽しまされ、珍しいお菓子を口に含むように、一行一行を味わって読むことができた。
官能作品とは、行為の描写だけでは成立しない。物語を綴る部分にも、読み手の五感を自由にさせる仕掛けがあれば、現実の官能より深く心が解き放たれることがある。そんな官能の旅をありがとうと、作者にはなむけの言葉を贈りたい。 -
大泉りか先生
大作ですね。格調高い雰囲気ときっちりと書き込まれた濡れ場が読み応えのある、とても力量のある作品だと思います。出来上がった世界観ゆえに、入りこめない人はつらいかもしれませんが、好きな人には「これしかない!」という作品だと思います。著者の方は、いつも、こんな感じの作品を描かれているのかと思ったら、今までに書かれていたのは学園モノだったりの正統的なTLが多いんですね。その意欲的なところを失わず、良質の作品を書き続けてくださいね。 -
山咲美花先生
高評価させて頂きました。人物像がしっかりとしていて小説としてとても面白かったと思います。
媚薬を盛って犯すシーンなんて萌え要素満点で、実は味方というところでさらに”萌え”を駆り立てられました。キャラクターの絵がイメージしやすく、脳内で映画を見ているように読めたところも高く評価しました。
若干ですが文面の長さが気になったので、もう少し短くまとめると良かったのではないでしょうか。 -
松村由貴先生
キャラの設定はファンタジーとしてはあり。が、もっと印象づけたい。前半、物語が平板に映るのはそのせいもあり、大きな劣情が煽られない。中国古代モノという設定は、TLでは最近徐々に見かけるもので、野心に溢れ好印象。ただし、後半、キャラの苦悩を増幅する構成の整理と、情交描写での劣情を高めたい。 -
内藤みか先生
この作品の特筆すべきところは、媚薬を使っている性描写です。しかも結構なページ数を割いて、媚薬によって全身が火照って乱れてしまうヒロインを描き続けたシーンはとても官能的で素晴らしかった。でも残念なのは、タイトル。何が起きる小説なのか、タイトルを見ただけで、想像がついてしまうのです。官能小説の賞なのだから、もうちょっといやらしいタイトルでもいいのではないでしょうか。たとえば「巫女は夜、媚薬に悶える」とかのほうがエッチでしょう?
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官能小説コンテスト
大人の恋愛小説コンテスト