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雨の日は、君と。
第2章 予期せぬ再会
「これは……」
拾い上げてみて、それが何であるか正体はすぐに分かった。
入学した年度から始まって、所属のクラスや生年月日と住所。
そしてその横に貼られた顔写真。
それは紛れもなく、生徒手帳以外の何物でも無かった。
「どうされましたか? 東雲先生」
「! いえ、何も」
咄嗟にスーツの胸ポケットに生徒手帳を仕舞う。
どうしよう……これ、きっと彼の物だよね。
ほんの一瞬目にした顔写真は“彼”で間違いなかった。
背後のベッドを振り向くが、高槻先生は扉を開けて私を待っている。
腕時計を確認すると、終業のチャイムまでもう時間がない。
「仕方ない……わよね」
「東雲先生?」
いつまで経っても保健室から出ようとしない私に、高槻先生が再び声を掛けてくる。
「今、行きます」
もう一度だけベッドを振り返り、後ろ髪を惹かれる思いで踵を返す。
カツコツと靴音が静かな室内に響く。
そして私は高槻先生と共に、保健室を後にした。