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影に抱かれて
第6章 ケージ・エピネ

そして恐る恐る呼び鈴を鳴らしてみるが、なんの反応もない。

真っ暗闇で立ち尽くしたまま10分あまりも待たされ、不安に押し潰されそうになった頃……やっとランタンの光が近付いて来た。それは、黒いマントのような修道服を着た、年配の修道士だった。

「フ、フランクール領から来ましたっ……僕の名前は……」

しっかり挨拶をしなくてはと声を張り上げるリュヌを見て、修道士は眉をひそめ指を口にあてた。

「シーッ……何という声を出すのですか。ここの夜は早いのです。本来なら到着は明るい時間にお願いしているのですよ」

冷たい物言いだった。

出鼻をくじかれ、意気消沈するリュヌ対しても表情を変えないまま、大きな鉄の鍵を取り出すと錠前をガチャリと開ける。

「ご、ごめんなさい……」

ギギギ……と音を立てて開く門の内側に小さくなりながらリュヌが入ると、門の鍵はすぐにガチャンと閉められた。まるで牢獄に入ったかのような大きなその音に、修道士はまた神経質そうに眉をひそめ、リュヌはさらに不安を覚えるのだった。

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