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影に抱かれて
第8章 心のままに

「君が行ってしまうことは分かっていたよ……。リュヌ、よく覚えておいて欲しい。人は嘘をつく……。君にはもう傷付いて欲しくない。だからもし君が今からでも僕と……」

名残惜しそうに手を伸ばすドゥルーの手を、リュヌは両手で握りしめ別れの握手をした。友人としての握手を。

「人生って不公平だよね……金にも血筋にも恵まれているのにたった一つの愛まで手に入れる人間もいる」

ドゥルーが窓の外を見たまま最後にそう言ったが、ジュールが全てに恵まれているとはリュヌにはとても思えなかった。

常に満たされない様子だったジュール。自分をあんなにも求めてくれて。

そのジュールが今どんな気持ちでいるのかと考えると……リュヌは恐れおののくような気持ちで部屋を後にした。




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