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ドラスティックな恋をして
第6章 夫という現実
「もしもし、僕だけど。今週末こっちに来ないか?ご近所さん達との集まりがあるんだ」
満たされた携帯電話を一番乗りで鳴らしたのは、夫・悟志だった。
「今週末?ええ、いいわよ」
金曜の午後の新幹線で上田に向かうと悟志に告げた。
悟志がセカンドハウスで生活するようになって2ヶ月ちょっと。
引っ越しの時に行ったきりだ。
仁美には薄情な妻だと笑われたが、
悟志のほうも忙しかったのでちょうどよかったのかもしれない。
悟志もさすがに畑仕事だけでは時間を持て余してしまうと、
自分にできそうな仕事を探し始めた。
年齢的に選べる範囲は狭かったが、田舎町では50代半ばはまだ若い労働力。
なので仕事はわりとすぐに見つかった。
道の駅での仕事だ。
農家が収めにきた野菜を一緒に並べたり、時には売り子として店に立ち、
初体験の客商売に力と時間を費やした。
おかげで、見知らぬ土地にもすぐに溶け込んでいくことができた。
職場の同僚である年配者や若い人。
そして隣近所、といっても都会のようにすぐ隣ではないが、おすそ分けをしてくれたり、
畑をいじっていればやり方を教えてくれたりと、
わりとスムーズに受け入れてもらえたと悟志は胸をなでおろしていた。
次なるは、妻である依子が、日ごろお世話になっているご近所さんや職場の方々に
気遣いを見せる番だ。
大げさな礼でなくていい。
小さくても感謝の気持ちを表せば、一人でがんばる悟志はもっと生活しやすくなる。
そのためにも今週末は夫の元へ行かねば。

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