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蕩けるようなキスをして
第54章 待ち合わせ
ひとり、この中町通りの歩道を、何度も往復もする間。
心に思うのは、それだけだった。
心に想うのは、彼女だけだった-…。
待ち合わせ場所は、イルミネーションが飾られている起点、大通りの一番端に建つ書店。
ちょうどその前に到着した。
陸は足を一度止め、ガラス張りの店内に目を向ける。
その本屋の入り口付近に、午後五時ちょうど。
先に着いた方がラインで知らせる-その約束だった。
とりあえず今日は、六時まで待ってみた-当然、どんなに待っても、彼女は現れなかったけど。
手袋もせずにいる両手は、冷たさを増し、かじかんでいた。
それでもなんとか、右手に握るスマートフォンのロックを解除する。
左手はコートのポケットに突っ込み、右手だけでスマホを操作する。
ホーム画面を確認しても、お馴染みのラインマークは表示されていない。
新着のラインは届いていない、証拠。
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