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蕩けるようなキスをして
第55章 待ち人来ず
ポケットから取り出したスマートフォンを、確認する。
待ち望む着信は。
待ち続けるラインは。
こない。
例え、今からだって。
もしも、彼女が連絡をくれるのなら。
『ごめん、陸。ちょっと遅れるけど、待っててくれる?』
いつまでだって待ち続ける。
彼女に逢えるのならば、喜んで。
でも。
でも、待った果てにいないなら。
彼女がいないのならば。
俺は-…。
苦しげに歪みかけた陸の顔が、一瞬動きを止めた。
少し前方を歩く、ひとりの人物に釘付けになる。
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