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蕩けるようなキスをして
第20章 指輪の跡
本当に今、私には誰もいないのに。
彼を問い質すように見れば、陸は寂しげに笑い、華夜子の左手を軽く顎で示した。
「薬指」
「え?」
「左手の薬指に、いつも指輪の跡がついてる」
指摘され、華夜子は自らの指を急いで確認する。
微かに残っている痕跡に、一瞬で激しく頬を染める。
今更なのに、慌てて左手を身体の後ろへ引っ込めた。
ばくばくと音をたてる、心臓-。
彼女の慌てふためく姿そのものが、紛れもなく肯定していた。
もしかしたら違うのかもしれない-淡い期待は、ものの見事に、砕け散る。
「彼氏からのプレゼントかなって、いつも見てた。普段はつけてないみたいだけど…家では眠る時もずっと、嵌めているんだろうなって。…あとは、デートの時と」
でなければ、跡なんて。
「凄く大事にしている物だから、きっと大学には嵌めて来てないのかなって」
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