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蕩けるようなキスをして
第35章 彼女の過去
思わず咎める口調になってしまえば、華夜子もまた不快そうに眉を寄せた。
「特に理由はないけど…友達との事も、いちいち全部報告しなきゃいけないの?」
束縛し過ぎの、面倒臭い男だと思われ兼ねない雰囲気だったので、陸は慌てて取り消しにかかる。
「いや、そーいう訳じゃないけど。…けど、なんでよりによって乃愛なのかなって」
言い訳がましく小声でごちゃごちゃ呟けば、華夜子は呆れたように告げた。
「別に乃愛はなんにも言わないし。私もなんにも訊かないし。心配しているような会話は一切ないから、安心して」
-そもそも、訊きたくもない。
華夜子は言葉を呑み込んだ。

『もう少し、待って』

二度も同じ台詞を吐いてしまった手前。
そんな事は言えない。
そんな-然(さ)も、妬いてるような、それは。
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