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秘薬が教えてくれた愛
第1章 若返りの「秘薬」
 ここは深い森の奥深くにある小さな家、ここで世捨て人のように暮らしている男がいた。彼は研究熱心な男で、以前は国の最高学府で教鞭を振るっていたが、ある日見つけた文献に興味深いものがあって、それを試してみたいとここへやってきた。

 その男はかつての役職から皆から尊敬を受けていた男で、名をヴィルヘルムという。彼は還暦に近いが、鍛えあげた肉体と男にしては美しい顔をしていたため周りからは40代に見られていた。
 その彼には恋人がいて、その女は年増の域ではあったが、艶めいた容姿と聖母のような微笑みを湛えていて、彼はその女をことのほか愛していた。名をレーナという。

 レーナは毎日ヴィルヘルムの元を訪れては、甲斐甲斐しく世話を焼いた。
 ヴィルヘルムは部屋に籠もり秘薬を作り上げるため大釜に多種多様なものを放り、それを煮詰めて唯一の秘薬作りに精を出していた。

 その日も朝からヴィルヘルムは大釜にコウモリの羽根やらサラマンダーの爪などを放り込み、魔法の杖で火を起こし煮詰めていた。そこへ現れたレーナが部屋に入り机の上に置かれた小さな小瓶を手に取ると、それを日差しに充てて眺めていたときのことだった。ヴィルヘルムの部屋にいた小さなネズミが突然現れ、レーナは驚きの余り手にした小瓶を落としてしまう。その小瓶が床に落ちて砕け散り、部屋はもうもうと立ち上る煙に包まれてしまった。

 レーナはけほけほとむせてしまい、そのまま意識を手放してしまう。ついには割れた小瓶から溢れた液体の上に倒れ込み眠ってしまったのだった。
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