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幸せの時効
第6章 誘惑
「私は高島検事に恋をしているから」

 あの食事のあと相模は正式に結婚を前提に付き合って欲しいと告げた。私はしばらく事態を把握できず呆然としていたようで、相模は困っていたようだ。自分を知って欲しいから、毎週一緒に食事をしようと言ってくれたが、どうしたら良いのかわからなかった。

 だけど、恋をしていると自分に言っていた相模の、どこか戸惑いが見え隠れした表情が気になってもいた。あの顔は、湯島を思い出させた。

 15年前の夏の始まりの頃、私はどうしても理解が出来ない所があって、それを講師であった湯島に相談し、大学の講義が終わったあとでレクチャーを受けていた。蝉の鳴き声、うだるような熱い風が開けた窓から入っていた。蒸し暑く、何もしていないのに汗がじわりと沸いてくる。首筋に髪の毛が張り付いていたのをそっと取り除いた湯島の太い指。その時私はぞくりとなった。

 微かに漏らした吐息に湯島は顔を赤く染め、慌てて指を引っ込めた。あの熱さは夏のせいだけではなかった。
 しばらく解釈について意見を交わす。融通が利かない私の言葉を否定ではなく、そんな考え方もできると言い直し、湯島は自分の解釈を述べていた。

 理解とは互いの意見を尊重しあい、二人の中で納得できたところを指す。私は湯島に『何か』を求めていたのかも知れない。その『何か』とは多分、自分を受けいれてくれる包容力だったかも知れない。湯島の側では頑なな心も解けていった。
 自分を理解してくれた男に女は弱い。多分あの時私もこの男なら自分を受け止めてくれるかもしれないと、手を伸ばしたのかも知れない。

 すべては想像だが。

 残業をしない日に相模と食事に行く回数が増えて、彼の人となりが少しずつ分かってきた。
 確かに包容力はある、大人の男だ。さらりとさりげなく私に触れるその仕草に女を刺激されてしまう。ともすればこの男に抱かれても良いとさえ思ってしまうのだから。

 愛を告げられた日からそれらしい言葉は何も語られず、仕事や趣味の話をして過ごす。機転をきかせた男の会話は私を酔わせていたのかも知れない。

 何度目かの食事のあと、二人で向かったのはホテルだった。

 ホテルのフロントでチェックインを済ませた相模が私の手を取ると、ふと尋ねてきた。

----抱いてもいい?

 耳元で囁く相模の声は甘く、思わず私は顔を逸らして頷いた。
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