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幸せの時効
第8章 真実
 相模に体を支えられ、彼の執務室についた。ソファに腰掛けて長いため息を吐く。体の力が抜けて、やっと人心地ついた。

 あの日話したことは全て嘘だと書かれていた湯島の手紙。それを握りしめて、執務室の窓際にいる相模の方を向いた。

「相模検事正は私を知らない。私は過去の過ちに縛られている人間です。それでもあなたは私を好きだと仰ることができますか?」

 相模は私の顔をじっと眺めている。何か言いたげな気がして仕方がない。言いたいことは何となく分かっている。聞きたくないがそれを聞くのが私の罰だ。

「過去は決して消すことは出来ません。だから人は後悔する。ただ過去に囚われて未来を手放すのは愚かですよ、高島検事」

 意志の強い瞳に目を奪われた。そんなことを言ってくれたのは3人目だ。一人は春季、もう一人は自分の祖母。彼女たちは私を支えてくれた。

 ふと背中を誰かに押されたような気がした。この人に全てを打ち明けようと。そしてその上で彼の言葉を待とうと決めた。

「昔話をしても?」
「伺いましょう。決して口外しないことを誓います」

 私は過去を話し始めた。
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