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幸せの時効
第9章 決断
 相模の執務室ですべてを話し終わったあと、私は心を決めた。

「相模検事正、あの夜のことは忘れてください。私は15年ぶりに彼と会って揺れていました。でもやっと----
「早く追いかけなさい、高島検事。時間は待ってはくれない」

 私の言葉をさえぎるような相模の言葉に頷いた。相模にこの後取り調べが残っていることを告げると、それは一度だけ別の日に移動してもいいと許しを得た。相模に礼を述べて執務室から飛び出した。

 私の未来を奪い返すために。

 冗談じゃない、彼の不幸に私が巻き込まれたのならば、私にだって償って欲しいと思うのは勝手なことだろうか。確かに私は彼が欲しくて腕を伸ばしたが、誰でもいいと手を取ったのは湯島だ。そして私を愛したのも湯島だ。泥棒猫と言われたのだ、ならば泥棒猫として、彼の妻から本気で奪ってやると思った。

 大学に向かうと、すでに湯島は退職していた。事務の人間に聞くと、有名な温泉地にあるホスピスを教えてくれた。
 そこへ今から向かうとなると夜になる。それではマズイ。
 私は日を改めてそちらに向かうことにした。
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