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幸せの時効
第4章 逡巡
 その後湯島の元へ行くことを避け、私は他の検事からレクチャーを受けることにした。地検のトップである相模検事正のもとに相談をしたところ、自分が時間があるときでよければと言ってくれた。

「高島検事は真面目すぎますよ。少しばかり肩の力を抜いた方がいい。なんでも突き詰めすぎると体と心が壊れます」
「これも性格だと諦めました」

 しばらく世間話に講じ、その後法律の解釈について二時間ほど説明を受けた。時間が迫る頃、相模からメモを渡された。

「もし分からないところがあるなら、いつでも連絡してください。力になれるならば私も嬉しい」

 穏やかな微笑みを浮かべ相模は言った。私も思わず笑顔で応え部屋をあとにした。

 廊下を歩き、そのメモを見る。プライベートの携帯番号とメールアドレスが書かれていた。ふと思う、もし仮に仕事とは言えプライベートの番号やアドレスに連絡したら、彼の妻はどう思うだろうか。また湯島の妻の顔が浮かんだ。せっかく頂いたものだが、こちらに連絡するのは避けようと決めた。
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