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よくある恋愛モノ 〜見えない心〜
第6章 ここにいない人



彼の心中を想いながら悠は遠ざかってゆくその姿を見るしか出来なかった−−−







「ハァ……」



美和を送り届けた龍青は彼女のアパートを見上げてため息をついた

今日一日を振り返りながら家路を辿る



「ねぇ、今日ウチ寄ってかない?」

「えー、絶対する気でしょ!」



彼の脇を一組のカップルが楽しそうに通り過ぎ、龍青はまた息を吐いた

今日は土曜日

もし家に来るかと尋ねれば、美和は頷いたかもしれない



「……っ」



自分の意気地のなさに苛立ち、龍青は歩を早める

こういう時に限って手を握り身を寄せ合う男女が嫌に目につく

電車の中で二人だけの世界を構築するカップルを見て龍青は舌打ちした



“僕だって……”



今日は初めてなんだからこれで良いんだ

美和との関係はあの二人に負けない

焦らなくてもその時は来る

いつか−−−



「……っ」



昼間聞いた美和の言葉が甦る



‘いつも奢りたがるから’



もしもその時が来る前に彼女が思い出してしまったら?

いや、どちらにせよ自分から離れていってしまったら?



ガチャ

バタン!



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