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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
 

 大きな窓から夜景と臨海公園が見える、白壁のままのリビングらしき場所にはテレビと白いソファと白いテーブル。そして白いラグ。

 待て。このひと、あたしのマンションの壁が白いから殴って怪我したと言ってたよね? ご自分の家の方が白すぎやしないでしょうか。

 あたしのマンション殴らないで、自分の部屋殴ればいいでしょうが!

 ええ、ここでご自分の腹の黒さに腹たてて下さい!


 火事場のなんとかで課長を抱えて無数にある白いドアを何回か開け、ようやくベッドが見える部屋に行き着いた。ここが寝室だろう。


 電気をつければ、やはりなにも飾るものがないこの部屋は、ベッドが黒いくらいで、クローゼットらしきところも白い。

 白は膨張色でもあるし、気が変にならないのかしら。

 それともアメリカ帰りって、こんな感じなのかしら。

 リビング推定18畳。この部屋は推定10畳。さっきも電気はつけなかったけど部屋あったし、贅沢なひとり暮らし。

 一流企業の忍月コーポレーションなら給料いいのわかるけれど、うちはそこまでよくないはずなのに。それとも課長クラスになったらぐんとあがるのだろうか。主任手当は雀の涙なのに。


「課長、はいベッドに着きましたよ。ベッドに置いてあるパジャマに着替えますよ。あたしに寄りかかって下さい、まず背広を脱ぎましょう」


 うおっ、そこまで寄りかかってくるか!

 重っ!


 課長の足の間に片足を差し込んで踏ん張り、やっとのことで背広を脱がせば、課長は無意識なのか条件反射なのか、タクシーで緩めたネクタイを完全に外そうとしているらしいが、上手くいかないようだ。

 課長の顔をあたしの肩に埋めさせ、あたしの手は彼の胸元でもぞもぞ。一見抱擁の図だが、課長の全体重を支えているあたしの足はぷるぷるだ。


「はあはあ、やっとネクタイ取れた。次はシャツ……って、え?」


 課長がぐらりと横にふらついて、あたしまでふらつき、お相撲状態。

 はっけよい、のこったのこった――やばい、課長をぶつけたら駄目だ。

 ベッドに、ベッドに倒せ!

 
 課長の頭を抱きしめるようにして、倒れた先はベッド。

 ……あたしまでベッドに転がり込んだ。
 
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