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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 

 どうすれば、朱羽に心を開いて貰えるのだろう。

 どんなに愛し合って繋がっても、心では、彼と距離があることが悲しくて仕方がなかった。

 そこまであたしは頼りないんだろうか。

 あたしは、そこまで朱羽の力になれないものなのだろうか。 

「あたしは、ただ守られているばかりの女になりたくない。……教えて。あたしが会社を辞めるという話は、もしもの話ではないんでしょう? なんでそういう事態になっているのか、わかるようにあたしに教えて」

「陽菜……」

 朱羽の瞳が、苦しげに揺れている。

「一緒に未来に進みたいの。朱羽は初めてあたしに、永遠を信じさせてくれたわ。予期せぬ出来事に、朱羽を失いたくない」

 朱羽は辛苦に満ちた表情を顔に浮かべて、あたしを見ている。

「……真剣なの」

 そう言ってから、あたしは裸で必死に言っていることに気づき、ちょっと待ってと朱羽に手のひらを見せて制止しながら、いそいそとバスローブを身につけ、朱羽の前に正座する。

 なんという間抜け。

 これだったらどんなに言っても、真剣さが伝わらないじゃないか。

 そんなあたしを見て、朱羽は大きなため息をつき、髪を掻き上げた。

「……聞いたら、本気に後悔するよ?」

 翳った美麗な顔。

「聞かずに逃げている方が後悔する。あたしが『じゃあ話さないでいいです、平和なところで守られていたいので』と引き下がる気性に思える?」

 朱羽は乾いた笑いを見せた。

 それが、決心した仕草なのだとあたしにはわかった。


「朱羽の敵はなんなの? 会社に関係あるひと?」

 朱羽は重い口を開いた。



「……関係ある。戦う相手は、オシヅキザイバツノトウシュだからだ」

「え?」

 オシヅキザイバツノトウシュ?

「忍月財閥。忍月コーポレーションの社長をしている、現当主だ」


 突然飛んできた鋭利な矢が、頭から貫いた気分だ。

 さらに朱羽は言った。


「さっきの電話は、現当主からで。体調がよくないから、至急で俺の見合いを早めたという連絡だった」

 見合い!?

 
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