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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「割り込み失礼します」
結城が背筋を正して言った。
「即答できるまでに至った努力を見て下さい。実力は、努力と根性でなんとでもなります。実際、そうやってうちは大きくなりました」
「あなたは?」
「結城睦月。営業課長をしています。そしてこの度、月曜日の株主総会の決議をもって、月代を会長に、俺が社長職を継ぎたいと考えています」
名取川文乃は、結城を走査するように目を細めた。
「月代さんの後をあなたが……。たかが営業課長であるあなたが?」
「はい。俺の力は十分ではない。不足している分、仲間達に力を借りようと思います」
「月代さんは逆だったわ。不足している者に力を与えた。マイナスだと自覚していながら、あなたは他人の力をあてにしているわけ?」
侮蔑じみた眼差しが、結城に送られる。
結城、頑張れ。怯むな!
「……残念ながら、俺は月代のようにカリスマ性があるわけでもなく、頭脳派でもなく、万能ではありません。ですが、俺自身より誇れる仲間がいる。仲間達の力があれば、俺はどこまでも強くなれます」
結城はたじろがなかった。強い意志をもった目で見返している。
「……あなたは自分の無力さを自覚しているのね?」
「はい」
「鹿沼さん、あなたは?」
彼女の目があたしに向いた。
「あなたは無力だと思っている人間が社長をする会社に居て、恥ずかしくないの?」
「恥ずかしくないです。私もまた無力で、仲間に支えられてきましたから。結城はあたし達が誇る男です。月代が背負った重責を引き継げる人間だと信じて、彼を社長に据えたい。突拍子もないことをしているわけではありません。結城が適任と思っています」