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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

 ***


 忌まわしきみゃーんは、突然入って来た藤色の老婆が連れて行った。

 あの猫かぶり、あのおばあさんの前ではいい子にしているのか。

 だからおばあさんはわからない。

 あたしが、あのネコのおかげで空腹が解消されていないことに。

 ……いいもん、猫舌が飲めない淹れ立てのお茶と、美味しい茶菓子でお腹を満たすから!!

 プライドにかけて、ネコに盗られたことは言いたくない。


 茶道――。

 正座しながら、点(た)てて貰ったお茶が入ったお茶碗が回ってきたら、正座をしたまま手をついてお辞儀をして、飲んだらくるっとお茶碗を回して、隣に渡す……くらいなら知っている。

 六年前に新人研修みたいな形で、新社会人のためのマナー講座のようなところに、社長の強い勧めで結城と衣里と同期で行かせられたことがある。

 社長、全然役に立たなかったよ。

「こんな感じだったよな?」

 結城が宙で右手を手前から奥へ揺らす。

「え、奥から手前じゃ無かったっけ?」

 あたしが反対側の動きをする。

「ま、まあどっちでもいいよな。回せば……」

「駄目です」

 色っぽい格好をしているくせに、眼鏡がキラン!と光る朱羽。

「真下さん、流派は覚えてますか?」

「裏千家」

「だったら陽菜が正解」

 なんだかよくわからないけど、あたしはやったと両手を挙げた。

「茶道には流派が沢山あります。中でも有名なのが、千利休の流れを汲む表千家、裏千家、武者小路家の三千家。流派によって、作法が変わる。襖の開け方も、畳の歩き方も、茶碗を回すのも……」

 朱羽がそう言った時、給仕が来た。

「これを身につけて茶室においでくださるようにと」

 それだけ言うと、さっさと帰ってしまう。

 目の前には、赤系と青系……性別に分かれているのだろう、小道具があった。

「おっ、扇子があるっす! それとあぶらとり紙とそれをいれる袋っすか?」

 すると衣里が盛大なため息をついた。

「あぶらとり紙ではなく懐紙。茶菓子を貰ったら皿代わりにするの」

 確かそんなことをした記憶があるが、六年前の記憶は朧だ。

「……帛紗(ふくさ)がない」

 朱羽が腕組をして言った。

「帛紗の色や大きさで流派がわかると思ってたけど、それを隠したいのか?」
 訝しげな顔だ。
 
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