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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

「……お前の声ならあのひとに届くかなと思った。そりゃあうちの営業はピカイチだけど、むっちゃんや真下は仕事となると相手に合わすくせがある。それだったらあのひとには届かないんだわ。不器用なくらい真っ直ぐ、洗練されていない剥き出しの感情を、あのひとは見たがっているから。それを、どんなに知識があっても……香月、お前は出来ない。お前は仲間がいて、ようやく感情を出せるようになったばかりのひよっこだからな」

 皆は黙っている。

「だとすれば、鹿沼がいいんだよ、あのひと相手には。鹿沼は感情に素直だからな、一緒にいる奴らも引き摺られる。まんまとあのひとの策にはまって、皆で悩んで苦しんで怒った末に、あのひとの長ーい茶の話に付き合わされたろ」

 あたし達は一斉に頷いた。

「茶の湯で、茶を飲んだ感想を聞かれるのは、必ずあのひとが気に入った奴だ。気に入った奴がいないと、感想も聞かずに終えるという。感想を聞かれたのはきっと……鹿沼だろう?」

 まったく気に入られているように思えないあたしが頷くと同時に、結城が頭をがしがし掻きながら言った。

「確かに真っ先に鹿沼に感想を聞いていた。過程はどうであれ、鹿沼がまっ先にネコや他の皆のために声を上げたし、ネコと本気で戦ってたし」

「なによ、悪い?」

「……カバ、お前歳いくつよ?」

「愛しの沙紀さんと同じ、28歳です」

 専務が引き攣った顔をした。
 
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