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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 
「大丈夫だって。また一緒に気持ちよくなろう?」

 一瞬、その甘い囁きにうんと言いそうになったけれど。

「公衆の面前で、なにを言う!」

「こんな俺、嫌い?」

「好きだけど、だけどっ!!」

「だけど?」

「駄目ったら駄目~っ!!」


「はい、着きました」


「いやあああああ!!」


「バルガーに」


「へ?」

 そこには見慣れたコンビニのマークがついた自動ドア。


「え、ラブホは?」

「あなたが行きたいなら、行くけど?」

「行かない、行かない。バルガーでお買い物!」

「ふふ、だったら入ろうか」

 朱羽はあたしを抱いたままで自動ドアを開けた。

「下ろして~っ!!」

「あはははははっ!!」
 

 好奇な店員さんの視線を感じながら、あたしは真っ赤な顔でずんずんと、最奥のドリンクコーナーに行った。

「あんな、あんな冗談言うなんて!」

 あたしは手にしたカゴに、珈琲コーラをぼんぼんと入れていく。

「え、半分は本気だったけど。あなたが同意してくれたら、つれて行くつもりだった」

 妖しく瞳が揺れている。

「時と場合を考えてよっ!!」

「考える余裕なんてないよ」

 朱羽が買い物カゴを手にした。

「そんな余裕ある愛し方、してないから」

「……っ」

 さらに赤い顔でずんずんとつまみ売り場に行って、ついて来た朱羽のカゴに珍味をぽいぽいと入れていく。

 あとは――。

「陽~菜。こっち見て」

 俺様プリン、俺様プリン……。

 やだ、売り切れてる。

「陽菜~」

 どのシリーズもないじゃん。

 どうして昔も今も、このシリーズだけそっくり売り切れちゃうの!?

 誰だ、俺様求めているのは!

「こっち見ないと」

 それに代わる新製品のプリンに手を伸ばしていたあたしの背後に立ち、後ろから回した手で顎を持ち上げた。

 変な声を出して反射的に天井を見上げる形になったあたしの唇に、横から顔を出した朱羽は、ちゅっとあたしの唇にキスをしたのだ。

「キスしちゃうぞ?」

 悪戯っ子のように笑う朱羽。
 
 濡れている唇が卑猥だ。


「してから言うな!」

「ははははは」

 
 ひとがいなくてよかった。

 いたら羞恥プレイだ。
 
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