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第6章 急かされて旅立つ

　それはどうやら、想像以上に最悪のシナリオである、と俺は察した。それはつまり、こういう話であるのだ。


　おそらくは会社側にしてみても、多くの社員に反感を抱かれている今の状況は好ましくない。その上に暗に社員のリストラを強行しようとするのだから、それは尚更だ。

　すなわち俺の復帰は、恰好のスケープゴート足り得る。そうなれば社員の反感は一旦、治まるであろうと、そう考えている筈だ。仮にも一度は表立って、リストラに抗っている人間であるのだから。

　だがその場合、たぶん俺は斎藤さんたちの力にはなってやれない――否、そんな力など一切残されはしない。社長に許しを乞い頭を下げるという形は、俺を懐柔させる意味を有している。立場的にも道義的にも、会社の言いなりにならざるを得ないのである。一度は自ら退職を願い出ている身だ。それが戻るとすれば、どうしたってそうなってしまう。

　俺の脳裏に、最悪の場面が浮かぶ。それは飼い馴らされた俺に失望しながら、会社を去ってゆく斎藤さんたちの姿だった。


「……」


　そんなものを頭の片隅に置き口を噤んだ俺に対し、太田は軽快に言葉を連ねてゆく。