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第7章 二人だけの時間に

「オイ……お前……？」


　お得意のタヌキ寝入りかと、ビクリとした俺に――


「そんなの――ずっと、いいって――言ってたじゃない」


　真はそう囁き、頬に触れた俺の手を握った。


　――トクン。


　およそ忘れかけたものを思い出すような――それは、懐かしき心音。

　誰かと――こんな風に。

　互いの瞳に互いを映し合ったのは、いつ以来のことだろうか。

　分不相応なときめきにも似た、でも異なる何か――が、俺を一気に臆病者にさせる。そう、それが本来の自分なのだと、必死に言い聞かせようとしていた。


「覚悟は――決まった？」


　真はそう問いながら、指先を絡めたその手を自らの胸の膨らみに、ゆっくりと誘う。


「なんの、覚悟だよ」


「さあ、知らないよ。でも、オジサンは私よりずっと長く生きてる分――難しい年頃なのかと思って」


「バカヤロウ。大の男を思春期みたいに言ってんじゃねーよ。それに覚悟だなんて言ったら、失礼だろ」


「それって――なんに対して」


「俺の目にしている、その魅力に対して――かな」


　浴衣の合わせに沿うようにして、右手は柔らかな膨らみに包み込まれていった。