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第9章 対峙して、知るもの

『で、では――ふらのは、今も？』


　その時、上野という女の声が少し上擦る。

　その声を耳にしながら、俺は堅苦しい口調を改め、こう答えた。


「元気ですよ――とっても、ね」


『そう、ですか……』


　電波を介してはいても、彼女が胸を撫で下ろすのが、わかった。

　相手が正面から相対してきている以上は、俺の方も嘘を言う訳にはいかない。下手に怪しい男だと思われてしまえば、警察にだって通報されかねないのだ。俺が最初に『保護』という言葉を選んだことにも、そういった事情が含まれている。

　とりあえずこれまでの会話で、俺たちは（恐らく）互いに警戒レベルを一定水準引き下げていた。しかしながら、もちろん話の本題はそれからであり――。

　それからも慎重に幾つかの言葉を交わし、その結果――。


『ふらのではなく、貴方様と――？』


「はい。まずは俺の方で、若干――話を伺えたらと、そう思いますが」


　俺は上野というその女と、合う約束をこぎつけているのだった。