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ホントの唄(仮題)
第9章 対峙して、知るもの

「ん――?」


 ポケットの携帯の振動を感じ、俺はその着信を確認。見慣れぬ市外局番は、公衆電話である可能性を考慮させた。

 真と別れてから、一時間余り。まだ早かろうに、と思うが。


「ちょっと、失礼――」


 と、一言。席を立ちかけると同時に、俺はその通話に応じた。そしたら――


『ああん、もう! 最悪ぅ!』


「ッ――!」


 突然の大声に、俺の耳の中がキーンとなる。俺は席を離れようとする、その切っ掛けを挫かれてしまった。


「バ、バカ! 大声で、がなってんじゃねーよ」


『だってぇー、映画クソつまんないんだし』


「だったら、終わるまで寝てろ」


『嫌だ。眠くないし。もう出て来ちゃったし』


「お前な……」


『そんな訳だから。あと10分以内に、迎えに来てね』


「ま、待てよ。こっちは、まだ――」


『もし来なかったら、この場で持ち歌を全力で歌ってやるんだから!』


「オ、オイ――!」


 ――プッ! と、勝手な言い分だけを残し、通話は切られてしまった。

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