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ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて

 山頂付近は次第に、ごつごつとした岩場の連続。流石に手を繋いだまま昇る訳にもいかず、俺たちは一歩一歩を踏みしめるように着実に更に上を目指して行く。

 ようやく辿り着いた山小屋にて、束の間の一息。ここまで来れば、ゴールは目の前である。水分の補給を終え、俺たちは堆い剣が峰へと臨んだ。

 そして――


「ふう……」


 額を伝う汗をぬぐうと、眼下に広がった最高の景色を、俺は感慨も深く眺めるのである。

 その傍らに、ぴっと肩を寄せ――


「やったね」 


 真はとても嬉しそうに、そう言った。


「……」


 暫しの間、同じ光景を目にし、同じ空気を吸う。

 今――真と共に、其処に在ること。それだけのことが、どうしようもないほど、不思議で。

 そう感じてしまうのも、流れ行く雲を見下ろしているせい――なのだろうか。



「すみません。宜しければ、写真を一枚――」


 山の標高を記した杭の前で、人の良さそうな白髪の男性に声をかけられた。


「では――撮りまーす」


 俺は気軽にそれに応じると、受け取ったカメラにてシャッターを切った。白髪の老紳士の隣りには、同じくにこやかな笑顔を浮かべている奥さん(たぶん)が寄り添っている。

 役割を終え、カメラを返す時だ。

 真から、こんな提案が――。


「オジサン――私たちも、撮ってもらお」


「いや、だけど……」


 と、躊躇するも。


「いいじゃん――記念だよ」


 そう押し切られた格好で――その結果。


「はい――笑って」


 ――パシャ!


 老紳士の手により、その一枚は俺の携帯の中へと収められていった。

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