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第11章 縋り付き、頼む

「……」


「俺はその言葉を、認めたことはない。後悔なんかしてないと、自分に言い聞かせてきたから。だが、大いなる決断を抱き彼女の元に奔った、その末路はあまりにもあっけなく終った。それを考えた時に、やはり俺は親父のその言葉から、逃げ続けて来たのかもしれない――そんな風に心の片隅では、常に何かが引っかかっていた。その後、祖母の元に身を寄せ、新井の姓を名乗ったのも。もしかしたら、情けない自分の想いを誤魔化す為の、ほんな細やかな抵抗に過ぎなかったのか……？」


「オジサン……」


　潤んだ瞳で上目使いに、真は俺を見上げた。

　その肩を思わず抱き寄せ、俺は耳元で呟く。


「だから正直に白状すれば、一人だと心細いんだ。真、頼む。明日、俺のこと――見守ってやってくれよ」


　遥か年下の女子に縋りついて、最早、大人としての体裁は崩れていた。

　そんな男の身体を、逆に抱きしめ――


「仕方ないな――わかったよ」


　真は確かに、そう言ってくれる。


　結果的に情で絆した格好だった。その体に対しての抵抗感は、確実に俺を苛む。まるで釈然とは、していないのだ。

　それでも、真に見守って欲しいと願ったのは、偽らざる本心である。

　そう――やはり、俺は怖いのだ。しかしながら、恐れるのは親父ではなくて――。

　明日、親父と対峙した刹那――己の中に湧き上がろうとする感情の形。それがどの様なものか今はわからずに、だから俺は恐れてしまうのだった。