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第12章 高崎家の人々

　明くる日の午前中。旅館をゆっくりと出発した俺たちは、それまでの旅時と同様に軽自動車の狭い車中で肩を並べて座っている。

　俺は車を走らせるが、その運転の様子はウロウロでノロノロ。この日の目的は先に述べて来た通りだが、まだ約束が決定に至っていない。仲介を頼んだ弟の拓実が、最終的な予定を報せてくる筈であり、それまでは何とも所在がないのだ。


　やっぱ、ごね出したんじゃねーの？　まあ、それなら、いっそ気は楽になり――って、それじゃ、どうにもならねーだろうが！


「……」


　頭の中でごちゃごちゃと考えてしまうのも、やはり不安の表れだろう。結果的に旅の最終地点を『家』または、その主である『親父』に定めたのだが。それを決断した俺自身が、どんな折り合いをつけるのか、まるでプランがなかった。

　事によっては折り合う処か、二十年の時を経て再び罵り合うことになっても不思議ではない。というか、その可能性の方が高い気がしている。そうなれば互いに歳を重ねているだけに、過去の場面とは比べ物にならぬほどに醜い争いになるのだろう。


　否、流石にそこは、俺が自制せねばなるまい。あの親父の偉そうな講釈を思い浮べるだけで、これでもかというくらいに憎々しいが……。まあ、忍耐だ。


　ともかく、俺一人ではなく――今は未だ、傍らに真を伴っているのだから。