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ホントの唄(仮題)
第12章 高崎家の人々

 人間というのは、恰好をつけたがる生き物だ。基本的には、誰しもそうなのだと思う。そして、男という生き物にとっては、特に顕著だ。

 面子、プライド、見栄、虚栄心――その様なものに心を揺すられ、自分を大きく見せたかったり、或いは在るがままの姿を隠そうとしたり。こんな俺にだって、そんな頃はあった。

 しかしながら『恰好をつける』という行動は、必ずそこに負荷が生じている。その上、恰好をつけなければと背伸びする心理が、結局は何処までも『格好の悪い』ことを、そうしてる本人が実は強烈に自覚しているのだ。

 そうした矛盾に気づいた時、俺は何時しか『恰好をつける』ことを止めていたのかもしれない。冗談じみてだったらともかく、本気でそうしようと思うことはなかった。

 結局は、自分でない自分になんて、なれないのだから。例え一時を誤魔化すことができた、としても……。

 だが、俺は今日――久しぶりに、それをしようとしていた。これから真の前で精一杯、恰好をつけようとしている。

 それまで述べたことと少し違うのは、飾ったり隠すのではなく、自らを晒すことで恰好をつけようとしていること。

 果たしてそれが可能なのか、まるでわからないし。真がどう受け取るのかだって、検討もつきはしない。


 まあ、それでも、いいか……。


 庭園を横に望みながら廊下を奥へと進み、俺たちはその部屋へと案内された。


「どうぞ、こちらです」


 襖が開かれ、そこで俺たちを待つ――まず、その幾つかの視線が、鋭く刺さってゆく――ようで。

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