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ホントの唄(仮題)
第2章 緊急モラトリアム

 もちろん一緒に暮らすなんて選択肢は、あり得ない。昨日までの俺たちは、赤の他人である。当たり前のことだ。

 だが、すっかりあの手前勝手でマイペースな性格に、やられてしまっているのも事実。その上、意識的にも無意識的にもあらゆる角度からなされるお色気攻撃は、独り身の俺の弱点を的確に抉ってくれる。

 あんなのと一つの部屋にいて、常に理性を保つのは難しいように思えた。


「そっか……いっそ、連れ出しちまえば」


 アレコレ考えた末、俺はなかなかいいアイディアを思いついた。あの狭い部屋で、わちゃわちゃしてるから妙な展開になるのである。

 そろそろ昼食時。戻ったら「飯でも食いに行くか」とでも誘えば、あの空腹女子はホイホイと着いてくる筈。そうして車に乗せて、そのまま東京まで運んでしまえばいいのだ。

 途中で不審に思った真は、文句を口にすることだろう。だがハンドルを握ってる俺に、無茶な抵抗をするような真似は流石にすまい。

 後は大人しくなった頃を見計らって、帰る気になるように説得してやればいいのだ。幸い東京までの道中。時間ならタップリとある。一日潰すことにはなるが、それはもう仕方ないと諦めた。


 あーあ、面倒事はさっさと片付けて、明日はハロワに行かないとな……。


 俺は些か憂鬱な気分で、自分の部屋に戻って行く。

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