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淫徳のスゝメ
第3章 私が最も華やいだ頃のこと




「彼女達は、何をされているんですの」

「家族ごっこよ」


 ビシィィィィィッッ…………

 びゅっ……ビシィィィィィッッ…………


 ゴム製の蛇が桜色の肉叢を打つ音と、少女達の喘ぎ悶える嬌音に、みゆきさんの解説が割り込む。


「鞭を振るっている彼女と、ロープに跨っている先頭の彼女はね、卒業後結婚の約束をしているの。だから、ここでは両親の役ね。おそらく、父親は彼女の方」


 みゆきさんは、今また鞭を二番目の少女に振り上げた執行人を視線で示した。


「あ"あ"あ"っっ……ひぅっ……ひぃぃっっ……」


「そして、今の一撃で泣き出したのが姉妹の片方。姉かしら。もう一人の娘が彼女の後ろ。そして、最後尾が兄の役ね」

「よくお分かりになりますね」

「彼女達とはお友達で、想像のお話をしょっちゅう聞かせてもらっているからよ」


 聞けば、婚約者同士の二人を除くあとの三人も、肉体を通して友愛に結ばれているらしい。

 この二組は懇ろで、ことあるごとに疑似家族を楽しんでいる。外ではどこにでもいる友人グループを装っている彼女達は、ごっこ遊びの時に限って、典型的な世帯を模倣するのだという。


「私達の祖母の時代は、女に発言権などなかったそうよ。遊びに出たり、冗談を言って笑ったりしても、ちょっと眉をしかめられたんですって。今でこそ男達への神聖視は薄れたものの、女達は性別の違うパートナーに不満は持っても、彼の前では彼を立てる愚行を犯しがちではないかしら。子供達も同様に不憫だわ。親が女であろうと男であろうと、その意思さえ蔑ろにされて──…」


 父親役の執行人が、長女の役を演じている少女の足に枷を嵌めた。枷には重石が繋がっている。

 腕も自由な四人の少女の肉体は、半ば不可抗の力によって、のべつ鞭から回避したがり、ロープを逃れたがっている。なかんずく母親役の後方にいる彼女は、涙を流して以来、その動きも反抗的になっていた。
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