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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと







 邸宅の内部は入り組んでいた。


 まづると引き離された私は使用人に連れられて、長い回廊を渡って深い階段を下った。



 地階は、客間や回廊とは打って変わって陰気臭く、無数の扉が円状に並んでいた。


「扉を一つ選んで下さい。部屋は全てに監視カメラが付いています。入室されると、自動的にカメラが稼動します。お召し物はこちらへ」



 私は、折角のお気に入りのワンピースを脱ぎ捨てた。

 お兄様の小遣いで生活している私は、さすがにもうお父様の庇護下にあった時のように一着の洋服をすぐに処分することはなくなっていた。懇ろな富豪にねだれば洋服であれ宝石であれ造作なく手に入るものの、そんなことをしている暇にもまづると会っていたい。



 長いネグリジェを揺らしたメイドは、私の裸体に目を見開いた。

 目蓋を伏せて、頬を染める。少女特有の反応を、私は見飽きていた。彼女は、すぐに顔を引き締めた。



 私に課せられたミッションは、私の選んだ扉の向こうで起きたことをなるべく正確に言い当てることだった。

 各部屋には、使用人、玩具、装置が調えてある。使用人の容姿や年齢、玩具の種類、それらの正解率によって、私の合否が出るらしい。



 私は手近な扉を選んだ。

 バンダナを巻かれて部屋に入るや、何者かが私の腕を引き込んだ。

 骨太の指。ただし皮膚は非常に滑らかで、私の名前を問うてきた声からしても、指のあるじは女と分かった。
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