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第5章 私の暗黒時代のこと

「つ……、続けて、下さ……──はゃっ、ぁん……」


　私の指は、バスローブを通して女のまろみを探っていた。

　小さく顫える胡蝶の身体はとろけるような曲線で、私を誘う。

　腕をなぞって太ももを撫でて、乳房を揉む。そうしながらキスを重ねている内に、私はパイルの障壁を剥いでいた。

　薄ら明かりに現れたのは、見事な身体だ。数ヶ所ほど、間近で見澄まして分かる程度の古傷がある。


　ちゅっ、ちゅ……

　くちゅくちゅ……ぴちゃっ、…………


「ぁっああんっ…………」


　慎ましやかな嬌音だ。蓮美さんが彼女のどこに不自由を感じているか、甄別しかねる。


　だが、まもなく私はある違和感を得ることになる。


　胡蝶は、おりふし薄目を開ける以外は、固く目蓋を閉じていた。

　私は特に気にとめないで、胡蝶の割れ目をなぞりながら、いたずらな罵倒を浴びせてやる。舞さんであればそれだけで満ち潮が嵐に変わる。姫猫であれば、ふざけて彼女自身も淫らな言葉を叫び出す。


「乳首、尖ってるよ……ここもぐちょぐちょ……。初対面の女に全裸にされて、こんなことされたがるなんて、いやらしいったら……」

「ぅぅ……ゃっ、っっ……」



　粘液は、次第に減少していった。


　泳いでいた私の指は、渇いた花びらに空しくこすれる。


　小刻みに顫えていた肉体は、恐怖の戦慄を守り込んでいるのではないか。

　手のひらを抱くような重みのある乳房が上下しているのは、私に紐づく欲望ではない、蓮美さんへの誠心だ。


「──……」

「ごめんなさい……。私、どうして良いか……」


「いつものことよ。条件を満たしたければ、続けて」


　胡蝶を見下ろす蓮美さんの目は、いつか姫猫を見澄ましていたように零度の私欲を孕んでいた。


「彼に、申し訳なくなって……罪悪感でいっぱいになるんです……。こんなことして彼に嫌われたら、裏切り者で、悪いことした私は、彼に捨てられるか……痛いことされるかも……うぅっ……」



　それでも、蓮美先生にも認めていただける身体にして下さい。



　胡蝶は私にしがみつき、薬代が払えなければ母親がここに雇われねばならない事情を打ち明けた。