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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと


「姫猫は欲すれば何でも手に入る。あらゆる富、あらゆる権力、望めば全世界の女だって国だって、世界を支配することも可能だわ。だけどね、貴女は将来、我慢や同情という悪徳の誘惑に遭う。いつかは分からない。貴女が見せたほんの僅かな隙に、強烈な引力は綻んで、貴女は気まぐれな同情のために没落して、暗黒の地に堕ちる」


 蓮見先生の目は、それこそ私を同情していた。


 私は、今日まで我慢も同情も経験したことがない。

 遊び歩くのをやめて真面目に学校へ行ったりだとか、金づるにしていた男達と縁を切って、その分の収入をなくしたことは例外だ。だが、それらはもっと欲しいもの、まづるとの時間を得るためだった。


「警告有り難う。残念ながら、私にそのような不運は来ないわ。先生の占いは外れるわね」



 続いて蓮美先生は、まづるの選んだ女体を使って占術を始めた。今しがたとまるで同じ手順だ。





「感心するほど人間嫌いね。外面が良いから占わなければ分からなかったわ。生まれ育ちは申し分ない、早良さんの家庭はお母様側がやんごとない血統なのね。お父様の方は、随分と狡猾に成り上がってきたようだけど……。ああ、気を悪くしないでね。そのために貴女が多くの人望を集めておきながら、人間をクズ同然に扱ってきたのは同情するから」

「面白い占術を有り難うございます、父に関してはこのところニュースで話題になっているから、蓮美さんもご覧になっていたのね。ただ、父はおっしゃる通りずる賢い。バレないように、強引な手口を使ってるんだけどな」
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