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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと





 律子は、知っているのだろうか。

 彼女が幻想(あい)を語れば語るだけ、私の焔は弱っていく。



 律子の見つめる世界はいとも烈しく官能的なのに、その肉体は、少女の背伸びほどの遊戯しか知らない。つまらない女だ、悪辣な女だ。私が何を欲しているか、律子はそれを想像する時、彼女以外の何者の影も見出さなかろう。





 まづる──…。





 どんな女も代わりにならない。

 私を支配しようとしなかったくせに、私の細胞の隅々にまで、今も麻薬のような快楽を残している。



「律子……。我慢、出来ない……。貴女の愛が、私をこんなにしたのよ……」


 体内は、禍々しい黒に補食されていた。空洞だ。その空洞を浮き彫りにするのは、私の最愛のパートナー。



 私は、クズも同然の私自身の肉体を、最愛のパートナーに押しつける。
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