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淫徳のスゝメ
第6章 私が見た海の向こうの嘲笑のこと


「神父さん、オレの仲間は貴方を歓迎しましたよ。遊は日本人で、貴女達もいずれ国に帰るのでしょう。結社に入る必要はありません、オレが姫猫さん達をお招きしたのは、アメリカの思い出作りの一貫として、少し遊んでいってもらいたいからです」

「注意していただかなくても、そういうものには加わりませんわ。私は政治とか、人間同士の団結とか、そのようなものに興味はありませんから」

「美しい人。貴女の誤解もといておかねばなりませんね」



 それからロベルトの説明が始まった。


 彼がリーダーを務める革命団は、比較的政治要素が薄いという。

 欧米は表層上先進的で、国民は自由な思想を許されているが、基督だの旧時代の風潮だのが彼らを戒め、水面下では未だ悪辣な思想の統一傾向が見られるらしい。

「遊、二日前、君も教会で体験したろう。姫猫さんと紹也さん、二人を花嫁に連れていった君は、従業員らには風変わりな金蔓でしかなかった。初め、彼らは君に反対したはずだ。せめて二日かけてでも、一人ずつと結婚しろと。しかし君は彼らにチップを握らせた。人間とは、そういうものだ。自身の偏見を他人に押しつけ、それが出来なければ変わり者として見なしたがる。それは宗教や国の所為だ。蒙昧家達は極悪だ、だが彼らも大きな力に支配され、真実が見えなくなってしまっている。遊には少し話したね、オレ達のこの革命団は、人間の自由性を革命する結社なのだ。傲った連中の過失を暴き、世に知らしめる。悪と名づけられるものを裁く人間がオールマイティに属するのだとすれば、悪と名づけられる行為を働く人間も、オールマイティらから人望を集める者ですからね」
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