この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
淫徳のスゝメ
第2章 私が享楽的親友に出逢うまでのこと

* * * * * * *


「唯子ちゃん」



 下校時の学生らが街に散らばる夕刻、私は従姉妹の屋敷に立ち寄っていた。

 早良の本邸からほぼ二駅西、辛うじてここも一等地と呼べる一角に、従姉妹、三井田唯子(みいたゆいこ)ちゃんは暮らしている。



「コーヒーしかなくて……お砂糖二本と、メレンゲ焼きと」

「有り難う。唯子ちゃん限定で、コーヒーも好きだよ」


 焦げ茶の髪を一本のお下げに結った唯子ちゃん。三年前まで女子大にいて、お茶会だの飲み会だのに、ひっきりなしに呼ばれていた。美食家で、おまけに今も酒豪なのに、そのプロポーションは非の打ちどころがない。

 私は唯子ちゃんの細い肢体が隣に降りてくる気配に酔いながら、甲乙つけ難い苦い液体に息を吹きかけた。


「…──甘い」

「あ、匂いもダメだった?」

「ううん、本当に甘いの」

「まづるちゃんってば、無理しなくて良いのよ」

 くすくす、と、少女のようなかんばせから、屈託ない気色がこぼれる。

 唯子ちゃんにとって、けだし私は甘えたがりで、未だ味覚もお子様なのだ。

 甘えたがり、それは、あながち否定出来ないかも知れない。


「そうね。無理……させないで」


 遠くに花の匂いがする。黒く濃厚な液体を、私は砂糖を入れるのも失念して一口喉に流し込んだ。


 唯子ちゃんの淹れてくれたおもてなし。


 若手公務員と恋愛結婚したために、唯子ちゃんの生活は、慎ましい。家事もほとんどこなしている。


 私は唯子ちゃんの目が測り、その手が注いだコーヒーに、食道から乱されてゆく錯覚に引きずり込まれていた。
/403ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ