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夜想曲~瑠璃色の奇跡~
第1章 其の一ー1・隠れ別荘~神聖なる‥


「そう・・・
横になって、手に頬を乗せて…
そう‥そのまま……」

「クスッ…
先生がこんな絵を描くなんて…」

「偶には人物画も良い、特に蒼(あお)なら尚更だ…」

「高橋先生らしくない言葉…」


広い屋敷の一室…

窓ガラスから入る明るい日差しの中、裸体のまま被写体として先生の言われるが儘に寝そべってうっすらと笑って……



明治も中過ぎ、世間は戦争戦争って息巻いているが私には戦争なんて関係ない

今はこの大きな屋敷の中で、時の著名人や画家などが頻繁にやって来て相手をするのが私‥いや私の他にも女性は沢山居るけれど…

此処はそんな場所、ちょっと名の知れた金持ちの商人が建てた有名人が密かに集まる別荘

著名人だって金が無ければ何も出来ない、明治の大物達と著名人がすれ違うこの別荘の中で、身を隠すように住んでいる



「今度は身を起こして髪を掻き上げるように…
良いぞそのまま」

今相手にしているのは高橋由一
日本人初の油絵を取り入れた画家として有名になった人

でも…そんな事はどうだっていい、今の私は言われた通りに先生の被写体になっているだけ


「そのまま脚を広げて…」

「ぃやんっ
いけない所が見えてしまうわ」

「いけない?
逆に神聖な場所だ‥
江戸の春画のような卑猥な画と一緒にしないで欲しいな」

「・・・そう・・・」

ゆっくりと先生の前で脚を開く……

先生は向こう側で何枚もラフ画を書いては床に落とし‥


画家は絵に魂を込めると言うけれど、今正にそんな言葉が合ってる

その目は私とキャンパスしか見ていない
心は絵にのめり込んで上の空
時間も忘れひたすら描き上げる事しか頭に無い


日差しが赤く夕方になっても描く手を止める事をせず、描き落としたラフ画が床一面に広がっても途切れない集中力

物を作る‥それは自分の命を削るようなもの・・・前に誰かが言っていた


「もっと脚を広げて!
そのま床に……そうだ良いぞ…」

「あ・・・はぁん・・・」

見つめられる視線が‥私を熱くする、その本気の瞳に犯されている感覚こんなのも此処に来てから知った……

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