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果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。



ジェーニオは特に慌てたり悪びれる様子もなく肩を竦めてみせる



「どうもここは薄暗くていけない。ま、卑しい人間にはぴったりだ」



その言葉にまたリリアが反応する

だが何かを言う前にレオンがジェーニオに近付いた



「卑しいのはお前だろう。この庶子が」

「……っ」



ここにきて初めてジェーニオの顔が歪んだ



「ッハハ、珍しくお怒りですね、兄上。いつもならこんなの受け流すでしょうに……ああ、もしかして彼女の影響ですか」



彼の手が再びリリアに触れるーーー



バシッ



寸前、レオンがその手を捕らえ強く握った



「こいつに触るな……!」

「……」



感情を剥き出しにする兄をしばらく見つめーーー

何を思ったか、ジェーニオはまた口の端を歪めた



「…なるほどね……同じ"自分のもの"でも彼女とミゲルは違うわけか……」

「何……?」

「でもね兄上、彼女のことをよく見た方が良い。この子、あの女と同じ瞳をしてますよ」



レオンの顔が更に険しくなる

と、ミゲルがいきなりジェーニオの肩を強く掴んで二人を引き離した


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