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果てのない海に呑まれて
第3章 レオンという男



ギシギシという音と微かな揺れにリリアは目を覚ました

固いベッドの上

シュミーズは着け直され薄い布をかけられている

部屋には誰もいない−−−



「……っ!」



と思いきや、ベッドのすぐ脇にあの男が座っていた

いや、壁に背をつけて眠っている

リリアは少しの間その男の姿を観察した



肩にかかるかというくらいに伸ばした波打つ黒髪

肌は白く美しい顔立ちをしている

そして何より、船に乗る人間とは思えないほど綺麗な格好をしていた

それはなにも着飾っているというわけではないが、着ている服の素材は高価なものだと一目でわかる

貿易を営む家に生まれたリリアは、彼がただの船乗りではないことにすぐに気が付いた



"でもそんなの関係ない……今はここから脱出しないと……"



そっと床に足を下ろし立ち上がる

ベッドが軋む音にさえ男が起きるのではないかとビクビクしていた



"あ…足が……"



そう思って下を見れば、怪我をした足に丁寧に布が巻かれている

彼がそうしてくれたのだろうか−−−



"ううん、どっちでもいいわ、そんなこと"



治療してくれたのだとしても、自分を辱しめた相手であることに変わりはない

リリアは足音を忍ばせて扉のところまで行くと、男が起きていないことを再確認して静かに部屋を出ていった


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