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果てのない海に呑まれて
第5章 負けられない闘い



日が、暮れた

薄暗い部屋の中でリリアはぼうっと宙を見つめている



あの男から逃れるためにこの身を捧げる

そう決めた後悔が頭の中をぐるぐると駆け巡っていた



“でも受けなければこれからずっと……”



そうならないためなら−−−

これで最後なら−−−







「覚悟は出来たか」



扉が開き一つの影が入ってくる



「……ええ、いつでもどうぞ」



小さく深呼吸をし、出来るだけ声が震えないよう毅然として言った



「クッ……本当にいいな、お前は」



レオンはリリアの隣に座ると、未だ身に付けられたままの深紅のドレスに手をかけた



「先に言っておくが」



ゆっくりと脱がせながらレオンは口を開く



「海賊行為を行う商船など珍しくもなんともない。それをしないのは古い因習に拘る旧家だけだ。だからギスタール家は滅んだ」

「生き残る為なら何をしたっていいと言うの?」

「今のお前だってそうだろう」



露になったリリアの首筋に口付ける



「今はもう貴族が商いをする時代ではない。金と物のやり取りなど潔く商人に任せれば良かったものを」



少し小馬鹿にしたその態度

やはり何か知っているのだろうか



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