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わたしはショートケーキが嫌い
第1章 インターホンを鳴らしたのは、


ドンっ!と、何かが床に落ちたような音がした。
ママは震えて動けずにいる。
パパの声はしない。

何が起きているのか分からない私はただ呆然とすることしかできない。

「なーんだ。弱いじゃん」

玄関から男のマイペースな声が聞こえる。

“なーんだ。弱いじゃん”

この男の台詞から考えられることは一つだけ。
死んだかどうかは分からないけど、パパがやられたって事だ。

ギシッギシッと、床を歩く足音が近づいて来る。
ママはキッチンから包丁を出すと震える手でそれを持ち構えた。

ママもパパがやられたと理解したらしい。

私は動けなかった。
足がすくみ、立ち上がることもできない。
けど、近づいて来る足音に恐怖は膨らんでいく。
怖いのに動けない。地獄だ。

「いやぁ、まさかタオル一枚で来るとは思わなかったよ」

その声はもう私の耳元で聞こえるくらい近くて、男は真っ白なパーカーに返り血を浴びて赤い水玉模様を作っていた。

「こんばんは」

男は私の前に立ち、ニッコリ笑った。
さっきの化け猫のような笑顔とはまるで違っていた。
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