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【寵姫】籠の中の牝獣たち
第1章 序章 【蠢く悪意】
「誰か、あれを呼んでくれ」
暗室に声が響いた。声は男のもので、放たれたと同時に消えてしまった。
それは足首まであろうかという絨毯が音の残滓を持ち去ってしまったのもあるだろうが、別の音が男の声を掻き消してしまったことでもあった。
「ん、じゅっ、じゅっ!じっ、はっ、んんっ!じゅばっ」
暗室には二つの音が絶えず響いていた。
一つは男の声の出所よりやや下のあたり。一定の律動で鳴り続ける水音だった。空気と共に液体を啜るような音には、短い息継ぎの呼気と、抑えきれない悲鳴が混じっていた。
もう一つは更に下から、規則的に主張していた。
……ぃんぃんぃん…ぃんぃんぃんぃん
「は、ああっ!じゅっ、あっあっあっあっ、んんっ」
何かに包まれてくぐもっているが、非常に機械的な駆動音だった。
二つの音は連動しながら発された。より正しく表現するなら、機械的な音に合わせるように、もう一つの声が高くなったり低くなったりを繰り返していた。
その時、新たな音が暗室に投げ込まれた。部屋の外側から、硬質なドアをノックする音。
「入りたまえ」
失礼します、と断りと共に暗室に光が指した。光と共に部屋に入ってきた者は女性の形をしていた。
入室するや否や、入室者は早足で部屋を横切って壁に歩みより、
「おおっ……」
分厚いカーテンを開いて、部屋から闇を取り去ってしまった。
暗室に声が響いた。声は男のもので、放たれたと同時に消えてしまった。
それは足首まであろうかという絨毯が音の残滓を持ち去ってしまったのもあるだろうが、別の音が男の声を掻き消してしまったことでもあった。
「ん、じゅっ、じゅっ!じっ、はっ、んんっ!じゅばっ」
暗室には二つの音が絶えず響いていた。
一つは男の声の出所よりやや下のあたり。一定の律動で鳴り続ける水音だった。空気と共に液体を啜るような音には、短い息継ぎの呼気と、抑えきれない悲鳴が混じっていた。
もう一つは更に下から、規則的に主張していた。
……ぃんぃんぃん…ぃんぃんぃんぃん
「は、ああっ!じゅっ、あっあっあっあっ、んんっ」
何かに包まれてくぐもっているが、非常に機械的な駆動音だった。
二つの音は連動しながら発された。より正しく表現するなら、機械的な音に合わせるように、もう一つの声が高くなったり低くなったりを繰り返していた。
その時、新たな音が暗室に投げ込まれた。部屋の外側から、硬質なドアをノックする音。
「入りたまえ」
失礼します、と断りと共に暗室に光が指した。光と共に部屋に入ってきた者は女性の形をしていた。
入室するや否や、入室者は早足で部屋を横切って壁に歩みより、
「おおっ……」
分厚いカーテンを開いて、部屋から闇を取り去ってしまった。