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【寵姫】籠の中の牝獣たち
第2章 第一章 歪み
智恵子は急ぎ足で廊下を闊歩した。急いでいるのは彼女が思っていたより部屋の片付けに時間がかかったから。時間がかかったのは、思っていたより東藤が派手にやっていたからだった。
(東藤様は、存外ああいう女が嫌いじゃないようね)
あれだけ派手にやった、というのは主の無言の雄弁であるわけで、そのような彼を久方ぶりに見た智恵子としては、意外、という感情を持たざるを得なかったのだ。
(やはり、あの方は楽しみにしている。今日のなさりようは、昂りを収めるためのものだったのでしょう)
なら、その期待を裏切ることのないよう、己の義務を果たさなければ。そう思うと、智恵子の歩みは一層早まった。
彼女が向かうのはとあるマンションの最上階。東藤が買い与えた部屋で、少女とその従者が住むには過ぎた部屋に、暗証番号を打ち込んで智恵子は入っていく。
「ただいま戻りました」
部屋は中央のリビングから各部屋に繋がる構造をしていた。リビングには巨大なテレビが黒々とした板となって鎮座し、それを取り囲むようにソファが並んでいる。その周囲に調度品が彩りを添え、ひとつの空間として美しさを作り出していた。
智恵子がソファのひとつに身体を沈めたとき、
「……智恵子さん?」
ややか細い声が彼女を呼んだ。
(東藤様は、存外ああいう女が嫌いじゃないようね)
あれだけ派手にやった、というのは主の無言の雄弁であるわけで、そのような彼を久方ぶりに見た智恵子としては、意外、という感情を持たざるを得なかったのだ。
(やはり、あの方は楽しみにしている。今日のなさりようは、昂りを収めるためのものだったのでしょう)
なら、その期待を裏切ることのないよう、己の義務を果たさなければ。そう思うと、智恵子の歩みは一層早まった。
彼女が向かうのはとあるマンションの最上階。東藤が買い与えた部屋で、少女とその従者が住むには過ぎた部屋に、暗証番号を打ち込んで智恵子は入っていく。
「ただいま戻りました」
部屋は中央のリビングから各部屋に繋がる構造をしていた。リビングには巨大なテレビが黒々とした板となって鎮座し、それを取り囲むようにソファが並んでいる。その周囲に調度品が彩りを添え、ひとつの空間として美しさを作り出していた。
智恵子がソファのひとつに身体を沈めたとき、
「……智恵子さん?」
ややか細い声が彼女を呼んだ。